HONZメンバーが最近熱く注目している大阪などは、名産名所が山ほどあるので御当地ランキングなんか気にもしないだろう。
しかし私の出身である群馬県は、2008年度47都道府県「地域ブランド力」調査で、なんと最下位だった。地元話をしても群馬については「えと…東北?だっけ?」みたいな反応も少なくない。地方出身が多いHONZメンバーからも「ああ!海無いよね(笑)」と言われる始末で、笑えない。
実は、2010年にも『群馬の逆襲 日本一“無名“な群馬県の「幸せ力」 』なる本が発売していた。群馬の魅力を再確認してもらおうと登場したこの本は、たちまち群馬県内でベストセラーになり、以来地元の名誉挽回に貢献している。
最近はスマフォのアプリでリリースされた、ネギやコンニャク、キャベツなど群馬県の特産品を収穫し、ためたポイント(GUNMA)でほかの都道府県を制圧していくゲーム「ぐんまのやぼう」も、100万ダウンロードを超える大ヒットシリーズになっている。
それでも、2012年度の民間シンクタンクによる地域ブランド調査魅力度ランキングの
結果は散々だった。(1位は北海道)
というか、また最下位じゃないか!どういう指標で調査しているんだ!
私の心の声はさておき、この結果に腹を立てた著者はまだまだ逆襲が足りない!と再度ペンを執り続編が刊行されたのである。
なぜ群馬はそれほど印象が薄く、地味なのか?群馬は東京から新幹線で40分ほど。空気と料理は旨いし、のんびりできて癒される。私も帰省するたびに「なっからいいとこだいな〜。むしろイケてっかもな〜」と方言まじりに思ったりもする。
しかし著者によれば、群馬県民は奥ゆかしさのあまり「なんにもないところさね」と言ってしまうらしい。こんなに楽しく暮らせる土地で、心の中では「群馬最高!」とか思っているくせに謙遜を優先させ宣伝ぎらいになってしまう。たしかに心当たりはある。私も群馬を格下に見ているHONZメンバーに、この本で群馬の魅力を伝えるべく逆襲を試みようとしてはいるが、いかんせんそこは宣伝下手な群馬県民。群馬の魅力を十分伝えられるかな、と読み進めていると
“そもそも群馬の人は、地元のよさを言わなすぎじゃないですか!”
すかさず著者が、それではダメと諭してくる。
“これは群馬という素材の問題でなく、明らかに情報発信の巧拙の話でしょう!”
憤慨しながら続ける。おっしゃるとおりです。
自分の住んでいるところに魅力的なものがないと嘆くより、その状況から武器になるものを発見したり作り上げていく努力をしていくことが重要だ、と説いている。名産というのは実はアピール次第、という事例が本書で述べられており興味深い。過去〜現在〜そして未来の展望について幅広い視点から記されているので、200万人の群馬県民が地元を知るには絶対に参考になるはずだ。
そこで著者は群馬県民に対し、2つの課題を出している。
1. 素晴らしさをアピールできる1〜3分程度のオリジナル群馬物語を考える。
2.「特徴がなくて、つまらないところ」と自虐ネタを控える。
それならば私も、さっそく課題1をやってみよう。
やはり群馬の歴史・文化の魅力について伝えたい。群馬は最強の恐竜王国である。あまり知られてないが、世界の恐竜研究者は、来日すると最初に群馬にくる。群馬には旧石器時代からの歴史があるのだが、それは100年や1000年という単位ではなく、恐竜の化石がみつかる2億何千万年という単位なのだ。実家の母もよく化石発掘のバイトをしている。古墳時代の埴輪や土偶や、卑弥呼の鏡が発見されているのも、あまり知られていない。
そして温泉王国はアピールになるだろう。群馬は知らなくとも、草津温泉や伊香保温泉は聞いたことがあるかもしれない。それ以外にも水上温泉、磯部温泉もあり、四万種類の病にきく四万温泉などもあり、あまりの温泉の多さには「石を投げりゃ、温泉旅館に当たる」とさえいわれる。
歴史を彩る人物も伝えたい。戦国武将、長野業政の存在だ。業政は居城・箕輪城を守り、武田信玄の侵攻を6度に渡って撃退している。「業正がいる限り、上州には手は出せぬ」と信玄を嘆かせた武将だが、小説やドラマでも取り上げられる事はない。業政の死後、それを知った信玄の猛攻により箕輪城は落城。息子の業盛は父の命で当時19歳で自害する。その生涯は大河ドラマのテーマになってもおかしくないのではないか?ここらへん歴史シュミュレーションゲームで名高い「信長の野望」シリーズでは検証が進んでおり最近評価されているのか、武力設定は高めだ。
とにかく著者の話は食に文化に、ネタが尽きない。よくこんなアイデアがポンポン生み出せるな、と読んでいて感心しっぱなしになる。本書の地域活性化シリーズは群馬だけでなく、『埼玉の逆襲』や『茨城の逆襲』など他の地域も発売されている。地元情報発信や地域活性の活動にとって、ヒントとなる考え方が随所に盛り込まれている。密かに出身地コンプレックスを持っていた人達は、是非このシリーズに目を通し、ついでに逆襲してはどうか。
最後に、著者の素朴で芯の強い言葉に胸を打たれる。
“私が暮らしている所は、最高にいいとこです、と誰にむかっても言いたいじゃないですか。それが郷土の誇りってもんでしょう”
——–こちらもオススメ——–
■群馬の逆襲 同著者による前作。名所・名産をくまなく伝えており、売れ行きは好調だった。
■埼玉の逆襲
そもそも埼玉に県民性はあるのか。キャッチコピーは「もうダサイタマなんて言わせない」(私は言ってません)
■茨城の逆襲
「いばらぎ」ではなく「いばらき」である。こちらも都道府県魅力度ランキングは2年連続で最下位を獲得経験あり。都会のマネはしない、という茨城の真の魅力にせまる。
■高知の逆襲
反骨、頑固……坂本龍馬をはじめ土佐・高知はいつも「逆襲」モード。
高知に学べば日本の逆襲が見えてくる。
■青森の逆襲
新幹線が開通しても、やはり青森は地の果てなのか?桜と「ねぶた」だけではなく、過去・現在・未来から「豊かな青森」を再発見できる一冊。
■島根の逆襲
そもそも島根ってどこ?と言われるイメージをエンジニアの兄弟である著者が見事に覆す。
島根は神話の里、パワースポットとしても「隠れ里」の魅力にあふれている。