『値段から世界が見える!』新刊超速レビュー

2012年11月27日 印刷向け表示
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値段から世界が見える! 日本よりこんなに安い国、高い国 (朝日新書)

作者:柳沢有紀夫
出版社:朝日新聞出版
発売日:2012-11-13
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海外旅行に行くときに気になるのは、気候や気温、安全性やお国柄、もうひとつ重要なのが物価である。そこならではのお土産が買いたいし、できれば町の食堂でご飯も食べたい。屋台では何を売っているのだろう、とか、マクドナルドやケンタッキーなど、日本の味と比較もしたい。もちろん、ガイドブックをみれば大まかなところは分かるけれど、一目で比較が出来たらいいのに。

長年、そんな本が欲しいと思っていたのだが、最新情報を記した本を見つけた。世界20か国に長期に住んでいる日本人が、生活にかかるコストやその国ならではのお金の使い道をかなり詳しく説明してくれる。

紹介されている国は、オーストラリア、スウェーデン、イギリス、ドイツ、イタリア、スペイン、ベルギー、オランダ、韓国、ポーランド、ケニア、アフガニスタン、アラブ首長国連合、インド、中国、ペルー、カナダ、ウズベキスタン、スイス、アメリカ。

基準となる品物は、ビッグマックMセット、牛乳1ℓ、電車(バス)の初乗り料金、書籍『ハリー・ポッターと死の秘宝』、世帯当たりの通信費、映画館の一般席大人料金、新聞の平日朝刊、トイレットペーパー1ロール。日本円との比較もさることながら、平均月収から推察して、その品物がどういう位置にあるのかがよく分かって面白い。

トイレットペーパーはまとめて買った方が安い、やら、日本食は高級だから高い、のような勝手な思い込みは覆され、教育にかける異常な情熱と費用や因習として残る結婚費用など、旅行者には直接関係ないけれど、仕事を一緒にする場合は必ず知っておかなければならない「その国の常識」に驚かされる。インドではトイレットペーパー1ロールが150円もするのはなぜなのか。読めば「なるほどね」と頷くはずだ。

例えば、オイルマネーで大金持ちのイメージが強いアラブ首長国連合。でも石油がたっぷり取れるのはアブダビ首長国だけなのだ。そのことに早く気付いたドバイ首長国はインフラ整備に力を入れリゾート地として売り出し、巨大な空港や港湾施設を整え、世界のハブ都市へ成長した。その労働力である外国人労働者への優遇措置はすばらしい。ひとつだけ厳格なのは罰金制度。駐車違反などは高額な支払を求められる。これは様々な国の人が自分勝手な解釈で暮らしては、国家が混乱するから、という明確な理由があるのだ。

日本は何でも物が高い、と思い込んできたけれど、最近はそうでもないらしい。選挙間近で乱立する政党が喧しいが、生活に直接かかわってくる税金や物価を他国と比べて考えるのも、投票先を決める一つの選択肢かもしれない。

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様々な国に住む日本人ライターを組織した「海外書き人クラブ」を知ったのはこの本だった。

ニッポン人はホントに「世界の嫌われ者」なのか? (新潮文庫)

作者:柳沢 有紀夫
出版社:新潮社
発売日:2009-01-28
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決定版-HONZが選んだノンフィクション (単行本)
作者:成毛 眞
出版社:中央公論新社
発売日:2021-07-07
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『決定版-HONZが選んだノンフィクション』発売されました!