3巻とも2006年に出版された飛行機イラスト本である。『丸』という軍事雑誌に連載されていたイラストを3冊にまとめたものだという。さすがに書店でも『丸』を立ち読みすることはなかったので、今週まで存在を知らなかった。
本書のイラストは飛行機であれば前後を圧縮し、人物であれば上下を圧縮したデフォルメが特徴だ。つまり全てが丸くなっていて、戦闘機や爆撃機の兵器としての生々しさは和らし、コックピット内のパイロットなどの人物も可愛い。
じつはもう10時間も本書を眺めている。イラストが最高なのはもちろんなのだが、取り上げられている飛行機もじつに面白いのだ。第1巻では水上戦闘機、巨人爆撃機、軍用グライダー、重武装軍用機、潜水艦搭載水上機、艦上攻撃機、親子飛行機、垂直離着陸機、短距離離着陸機、可変翼機に章を分け、330機もの飛行機が掲載されている。
複葉時代の水上機は水がかからないように、エンジンとプロペラが上部についている。映画「紅の豚」のポルコが乗っていたサボイアがそれだが、なかには古いロールスロイス風のラジエータが上翼に鎮座しているのもある。
複葉の巨人爆撃機のなかには3段重ねの40メートル幅の翼をもち、人の背丈よりも大きい4台のエンジンを搭載し、エンジンを全開したら逆立ちして大破したアホ飛行機なんかも描いてある。
胴体も翼になっている全翼軍用グライダーもある。翼幅62.5mで140名の兵員を輸送したのだというからスゴイ。ソ連が1946年に作った重武装軍用機が笑える。胴体内に88挺の機関銃を斜め前方に向けて配置してあるのだ。弾数は多かったが初速が低いため、高度をとると全く威力はなかったらしい。
親子飛行機も爆笑だ。1機の巨人機の翼に5機の子飛行機を括りつけてみたり、飛行船にフックをつけておいてそれに引っ掛かるようにして「収納」されたりする。描かれている飛行機は複葉機から現代機まで考えつく限りといった感じだ。
これがフルカラーだったらかなり高額でも買うと思う。どこかの出版社が出してくれないものだろうか。ちなみに第2巻では無尾翼機、デルタ翼機、混合動力機(これがかなり笑える。複葉プロペラ機にラムジェットエンジンをくくりつけたりしているのだ。あははは)回転翼機、高速軍用機、2階建て軍用機が扱われている。第3巻は双胴機、日本軍用機、スペイン内戦の軍用機などに分かれている。
ところで、7-8月は微妙な時期だ。日経BPのBizTech図書賞の審査委員を引き受けているため、10冊ほどの候補作品を読み込まなければならない。しかも、受賞発表までは候補作の書評は書けない。ということは、このブログでこの時期に紹介する本は、今年のBizTech図書賞の候補になっていないということだ。ともあれ、この季節はまわりが本だらけになる。