本書は8章だて223ページの選書である。そして本稿は本書の第3章まで読んだところで書いている。第3章まででも、充分に紹介に値する本なのだ。あまりに面白い。残りはじっくり読みたいので、ひとまず第3章までをご紹介しよう。
とはいっても、具体的なエピソードを紹介するのは野暮すぎる。少なくとも第3章までについては、映画のストーリーを紹介するのに匹敵するからだ。第1章はサルコジという人物の概観。第2章は最初のファーストレディーであるセシリア。第3章は現在のファーストレディー、カーラ・ブルーニの章だ。
しばらくフランス映画を見ていないのだが、第2章と第3章だけで2本分のロマンスと陰謀が渦巻くフランス上流階級の内幕映画そのものだ。とてもお堅い新聞記者が書いたものとは思われない。文章はスピード感に溢れ、視覚的で、上等な小説を読んでいるようだ。コルシカ島やマラケシュなどの世界の観光地が登場し、どろどろの愛憎劇が繰り広げられる。とても実話とは思われない。
登場人物はジョージ・ブッシュなどの政治家はもちろん、エリック・クラプトンからミック・ジャガーまで、なんとファーストレディーのロマンスの相手としてあらわれるのだ。
本書の第3章までを読む限り、現在のフランス政界は日本の常識だけでなく、世界の先進国の常識から完全に乖離している。第4章以降で著者がこれをどう調理するかがじつに楽しみだ。第4章以降はサルコジの野党対策・メディア操作などが続き、最後にはサルコジのストーリーを重視したマーケティング政治へと進むらしい。
しつこいが第3章まで読んだところで、本書は間違いなく買いである。書店から消える前に買うべきであろう。対象読者は政治マニアやフランス好きだけでなく、映画ファンも楽しめるかもしれない。第4章以降の紹介は次回で。