著者からの献本である。著者とはマネックス証券の松本大氏と3人で『トーキョー金融道』という本を出版したこともある。『トーキョー金融道』は東洋経済新報社の月刊「金融ビジネス」に連載されていたものを2003年に一冊にまとめたものだった。本書も2003年に刊行されており、こちらは版を重ねついに改定新版の登場となった。友人からの献本を手放しで褒めるわけにはいかないが、すくなくともアマゾン上でのレビューは26件の☆5と8件の☆4だけで、非常に好評である。
第1章 為替のマーケット
第2章 短期金融マーケット
第3章 長期国債マーケット
第4章 金利スワップマーケット
第5章 オプションマーケット
第6章 日経225先物・日経225先物オプション
第7章 運用と調達の考え方
第8章 金融リスク・ヘッジファンド・その他
まさに金融マーケットの教科書だ。メガバンク・地銀に勤務する若手・中堅は読んで損はしない。いつかはマーケットに関係するかもしれないからだ。一般的な教科書よりもはるかに理解しやすいので、本当におススメだ。たとえば、金利スワップを説明する項目では個人とIBJ(旧興銀)と東芝という実名を出しながら、モルガン銀行の金利スワップを組み込むことで、IBJが長期資金を集め・短期貸しをできるようになったことを説明する。一般的な教科書では変動金利と固定金利の交換とか示しているだけで、実際の取引を想像できないため理解しにくいのだ。
本書は著者の「おしゃべり」、失礼!「講義」をもとにしているため、モルガン銀行時代などの著者自身のエピソードがところどころに盛り込まれていて、じつに面白く読める。その昔、著者が発行していたFAX通信「プロパガンダ」が懐かしい。著者は市場の金融機関向けにFAXしていたらしいのだが、あまりに面白かったため、受け取った金融機関はさらに取引先の幹部に向けて再FAXのサービスをしていたほどである。著者自身の「キタナイ字」で、失礼!「個性的な字」で、ご自身の「おマヌケな」、失礼!「おちゃめな」エピソードを語っていた。いまでもフジマキジャパンのサイトでみることができるはずだ。
ところで先日、インスパイアでたまたま著者の弟である藤巻幸夫氏にお会いした。会議室があまりにやかましいので、雑誌の取材中を抜け出して、だれが来ているのかとチェックしに行ったら幸夫氏だった。当方が「お久しぶり」といってから30分つかまった。次に当方が発した言葉は「またねー」。二言しか話せなかった。以来、1週間ほど異常にテンションが上がってしまい、いまでも万能感が残っている。困った兄弟である。