アニメに出てくる架空の建造物を、プロの建設会社が真剣に作ろうとしたら一体どうなるのか?そんな、とてつもなく壮大なスケールの企画が実現した。
担当したのは、大手ゼネコン・前田建設のファンタジー営業部。過去にも『マジンガーZ』の地下格納庫や『銀河鉄道999」の高架橋など、各種の建造物を積算をしたことでもおなじみのプロジェクト。本書は、Webで連載していたその模様を、書籍化したものだ。
今回挑戦するのは、国民的アニメ『機動戦士ガンダム』の地球連邦軍基地ジャブロー。時は、人類が宇宙に移民を開始してから半世紀が過ぎた宇宙世紀の時代。場所は、南米アマゾン川、ギアナ高地周辺の地下深く。地球連邦軍の総本部としてひっそり佇む地底の巨大秘密基地、それがジャブローである。
遊び心を持ちながらも真剣に検討している様子が、ディテールへのこだわりから伝わってくる。例えば、ジャブローの建造物が、はたして最初から軍事基地だったのかという視点。これについては、貴重な生態系のあるアマゾンという立地を鑑み、元々は生物多様性の研究施設だったものを用途変更したのではないかと仮説を立てる。リアルな設定が魅力のガンダムとはいえ、現実と架空の間には埋めなければならない溝が、実に多いのだ。
また、「ジャブローに関連して何を検討して欲しいか?」というアンケートにおいて、圧倒的多数で要望が寄せられたのが、量産型モビルスーツ「ジム」の生産工場。これに応えるために、重量や大きさが近い、大型トラックやホイールローダーの生産工場を見学しながら悪戦苦闘する。
はたして気になるジャブローのお値段は?そして、工期はどれくらいかかるのか?ちなみに本のオビには「本当に請け負います!!」の文字が。建設業の面白さも余すところなく伝えており、ガンダムファンならずとも楽しめる一冊。