今回紹介する本は、かなりロマンチックだ。
いつも本気でオススメ本を紹介しているが、HONZを閲覧していただいてる方(8割の男性)には、一見かなりのロマンチック風で違和感ある場合もあると思うので、あらかじめご了承願います。
著者の占いサイト「筋トレ」は口コミで広がり、今では3600万アクセス(2012年3月)を誇る超人気サイトとなった。サイト上ではホロスコープによる星の配置から、毎日12星座の運勢について語られているが、本書では占いそのものというよりも、願い事の対象となる惑星についての記述がされている。つまりは“天文エッセイ”だ。
ちなみにホロスコープとは、ある瞬間の星の位置を写し取った空の地図の事であり、出生ホロスコープと言う場合、その人が生まれた瞬間の太陽、月、惑星の位置を12星座の区切りで写し取った空の地図を指す。なお、私達の誕生日の星空は毎年ほぼ同じ光景となる。
と、こんな風に星座について詳しくなれるし「星に願いをかけるとしたら、どの星に願えばいいの?」というHONZセンチメンタル部が発足しそうな疑問も、この本がズバリ答えてくれる。私は今、自分の乙女チックな中身をさらけだしているようで、かなりこっぱずかしい。(春画の紹介は抵抗がない)こっぱずかしいついでに告白すると、2008年から筆者のサイトをチェックしており、今では一日に何回も見る石井ゆかり中毒者である。ただ誤解のないように言っておくと、人生は「選択」の連続でもあるが、占いに頼って都合のいい未来を期待しているのではない。ましてや占いにまかせてフテ寝するような責任転嫁も無論しない。むしろ現在に地に足をつけ未来を選択するために占いを活用しているのだ。
(c)Fuzuki Arai
西洋占星術での「12星座占い」は牡羊座から魚座までを指すが、ホロスコープで使用するのは太陽、月、水星、金星などの10星を、時計の針として使用している。月や水星などの呼び方は、中国から伝わった宿曜からきた名前だが、西洋占星術の世界では「ビーナス」や「マーキュリー」など神様の名前で呼ばれる。つまり西洋では星は神様という訳だ。神であれば、人間が祈りを捧げ願うのは至極当然で、日本でも病気であれば薬師如来に、勉学であれば天神さまと古来より願いをかけてきたのと同じである。
もちろん読者は自分の星座を知っていると思うが、その主たる性格はどういったものになるのかご存知だろうか?これまでは眺めるだけだったのが、星の性質を知った上で改めて見上げると、神聖な気持ちで星空本来の魅力を体感できる。恋愛だったら「金星」、社会的な成功を願うなら「木星」と目的別に惑星に願いをかけてはどうか。ちなみに何かの事業や、新たな仕事にチャレンジすることであれば「新月」がバッチリらしい。月と金星が接近するなど重要な配置はコンジャンクションといって、新たな組み合せで違う効能を生み出すそうだ。まるでインテリアのカラー配色である。
日食と月食は、「いま」を体感できる空の一大イベントで毎年2~7回の食が起こる。地球から見た太陽の軌道である「黄道」と、月の軌道「白道」の交点で起こる現象だ。この交点を星占いでは「ドラゴンヘッド」という。古い時代には、月や太陽の光が欠けていく食は「不吉」のイメージであったが、メカニズムが解明されるにつれ、占い界でも別の意味を見出すようになってきたそうだ。太極拳でいう、陰極まれば陽になるといった所か。星読み達のオススメサイト、アストロアーツによると2012年の食は5/21の予定だ。
あとがきに筆者の願いが込められている。星読みは、現在の配置で未来を予測する。しかし実際は、過去からの光を見て、未来の流れを予測する。私達が見る光は、過去600年前に旅立った光もあり(太陽は8分前)、それらを思えば「いま」が本当に輝くように思えるはずだ、と。ここが本書の骨子であり、現在を自分らしく選択していればよく、決して打算的に「望ましい未来を選ぶ」のではない。
添えられた星空や惑星の写真も美しく、(NASAやJPLなどから取り寄せている)本のプラネタリウムと言える一冊だが、見方によれば、夜ふと星空を見上げ明日も頑張ろうと思える希望の本にもなる。私は大学時代に地方から上京してきたので、今でも都会の空を見上げながら、ふと田舎の星降る夜空を思い出してしまう。
——–【その他オススメ】——–
『月刊星ナビ』は毎月5日に発売される星の雑誌。写真が綺麗で、初心者でも天体ドラマを解りやすく味わう事ができる。コラムも充実。
こちらは年間の星イベントを網羅している『ASTROGUIDE』。2012年の天文現象を豊富なイラスト・CG・カラー図版で紹介し、食など見どころがすぐに解る。
星といえば宇宙。宇宙ときたら時間。以前、高村和久がファミレスの中で執筆/紹介していた時間についての一冊。
オノマトペなど著者の巧みな言葉が色濃く反映されている星座本。しかし単純に12星座にキャラクターを置き換える話ではなく深い話。サンプルは蟹座だが、自分の星座をどうぞ。装丁がセンチメンタル部。