タイトルが何ともすごい。「原発」と「アウトロー」と「青春白書」をつなげてしまったのである。ピーコのファッションチェックなら「あなた、ちょっと」と激怒されそうな組み合わせだが、内容は良い意味で期待を裏切らた。
本書は福島県の原発がある街で育ち、震災前から原発で働く3人の若者に焦点を当てている。当事者中の当事者である彼らが原発が日常にある街でどのように育ち、なぜ原発で働くようなり、震災時に何を見て、そして今、何を考えているのかが綴られている。内容は3人の若者の語りを中心に時系列で構成されている。原発関連本は多いが、震災前から原発に従事していた現役作業員の声がこれほど前面に出ている本は少ないのではないだろうか。
被災者であり原発で働く彼らを賛美する内容かと思う方もいるかもしれないが、著者は彼らを英雄視する気もないし、哀れむ気もない。一定の距離を持って乾いた視線を投げかけることで、彼らの思いをうまく浮き彫りにしている。三人は思春期に若干やんちゃな生活を送り、何となく原発で働くようになった。震災直後は一目散に逃げたが、今現在は、被爆の危機に身をさらしながらもかつての原発作業に従事している。なぜか。
「今は何で働いているか……。心意気じゃないすか。“でもやってる”。そういう気持ちで初めはやっていた訳じゃないすか。でもやっているうちにわかってくるんすよね。これ意味ないなって。今の仕事意味ないなって。-中略-それ考えると(故郷に)戻りたいからやってるというより食っていくためにやっているというしか、って感じですけど。でもどっかで見切りつけなきゃってのはあるよね」
故郷を思う気持ちや、原発作業員としての自負ではなく、結局は生活のためだと三人は言う。原発の街で育った彼らであるこそ、先が見えない中、働くことへの無力感が増しているのかもしれない。だが、日常は続いていく。そこの間で揺れている彼らの気持ちは何とも切ない。著者は『実話ナックルズ』発行人。雑誌制作のトラブル話をまとめた、前作『トラブルなう』とは全く違う切り口だっただけに早くも次作を期待してしまう。