『昔のグルメガイドで東京おのぼり観光』 新刊ちょい読み

2012年3月3日 印刷向け表示
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昔のグルメガイドで東京おのぼり観光

作者:地主 恵亮
出版社:アスペクト
発売日:2012-02-24
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50年前のグルメガイドを片手に、今なお残るお店を訪ねていくという珍企画。元ネタはデイリーポータルZの「50年前のガイドブックに載っている店巡り」という記事だ。

グルメガイドは『味のしにせ』(1962年・北辰堂)、『東京うまい店200店』(1963年・柴田書店)、『東京横浜 安心して飲める店』(1965年・有紀書房)、『東京の味』(1968年・保育社)の4冊。ここに掲載されている50年前の地図を頼りに、東京近郊のあの店やこの店をブラブラする。

こんなにも簡単にタイムスリップ感を味わう方法があったなんて!という斬新なやり口だ。しかも、ガイドを見ることによる過去へのタイムスリップ、実際にお店に行った時の未来へのタイムスリップと、一冊で二度おいしい。

そして、紆余曲折を経てお店にたどり着いた時の出会いの瞬間、その描写がなんとも可笑しいのだ。

たとえるならば、久しぶりの高校時代の同窓会で、鈴木君(仮)が高級な服を着ていて、いわゆる勝ち組の風格で輝いていたという感じだ。(トンカツ・ハゲ天/銀座)

久しぶりの同窓会でたとえると、山田君(仮)が山田君のままだった、という感じだ。歳もとっているし、着ているものも学ランではないけれど、一緒に机をならべていたころの面影は変わらない。いまでは有名企業のかなりの役職に就いているけれど、中身は英語の補習を一緒に受けたころの山田君のままなのだ。(団子・羽二重団子/東日暮里)

たとえるならば、小学校卒業以来久しぶりに再会した初恋の相手・石原さん(仮)が、いまなおきれいだった、けれど結婚していた、という感じだろうか。もっと早く好きだと言っておけばよかった。(桜餅・長命寺 桜もち/向島)

分かるようで分からない、「久しぶりの同窓会」への例えが連発。この絶妙のハズし感が、妙にツボにハマる。そして、これだけ気持ちが昂っていれば何を食べてもおいしくなりそうなものだが、50年前から存在する老舗の味も存分に満喫している様子だ。

妄想だけで良いおかずになるんだなと感心しきりの一冊。

決定版-HONZが選んだノンフィクション (単行本)
作者:成毛 眞
出版社:中央公論新社
発売日:2021-07-07
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