- 作者: ジョセフ・ヒース
- 出版社/メーカー: NTT出版
- 発売日: 2012/02/09
売れ線を狙った邦題だなというのが第一印象か。帯には「ヤバクない経済学!」ともある。この時点で『ヤバい経済学』を意識しすぎて、やばさはプンプンなんだが、原題は「FILTHY LUCRE Economics for People Who Hate Capitalism(不正利得-資本主義が嫌いな人のための経済学)」。実は、ほぼ原題そのままであり、売れ線でもなんでもなく、原著に忠実なのだ。ヤバくない邦題なのだ。
タイトルどおり経済学入門書だが、著者は実は哲学者。税金、価格統制、国際貿易などの問題について保守、リバタリアン論者からリベラル論者までそれぞれの主張を的確に拾いながら、同時に経済学の持つ矛盾点を批判している。もともとの畑が違うから、見えるものがあり、指摘できるものがあるのだろうと納得するところも多い。
本書の最大の特徴は身近な話題をちりばめることでのわかりやすさと、軽妙なたとえ話による読みやすさだ。プロローグの一文目が「『ブレードランナー』が公開されたのは、私が高校生の時だった」である。経済学の書籍とは思えぬ、何とも惹かれる書き出しである。『ブレードランナー』、観たことないけど。とにかく読みやすいので、学生や若い社会人の中で経済学関連の書籍に手を出したものの、「ちょっと、何いっているのかわからない」状態だった方にも、おススメだ。
価格も個人的には絶妙だ。2940円。ここ1年、HONZに携わって以来、2000円以上の本でもポンポンとamazonのカートに入れてきたがさすがに最近、しんどくなってきた。3000円をこすと躊躇してしまう。それを考えると、私も含めHONZ中毒者の心を読み切ったような値付けだ。ほとんど3000円なんだけど、2950円ではなく2940円。新橋の激安居酒屋の飲み放題プラン並に考え抜かれた値付けだ。安くはないが、買ってしまったよ。私の負けです。いずれにせよ、激安居酒屋行きを一回我慢すればよいのである。「ちょい読み」より「ちょい飲み」の好きなああなたも、発泡酒片手に本書を読む週末も素敵じゃないかしら。ちょい暗いか・・・。