今日はもう一本アップしたいと思っているので、少し軽めに。
1月の朝会で、栗下直也がこの本を紹介していた。
この本を読んで「妻に気持ち悪がられた」という栗下は、「要するに『子どもは虫を採れ!』ということなんですけどね」と本の内容をあっさりまとめたが、果たして虫採りが本当に教育にいいのか、本書を読むと、非常に不安になる。
昆虫採集を一番の遊びとして育った著者は、たしかに自由で無邪気、そして魅力的な少年だったであろう。しかし、「そのまま大人になって」、現在も「昆虫標本商」を営む彼の人生はかなり破天荒だ。
蝶を求めて長く滞在したフィリピンでは、蝶の標本を日本に送って小金を稼ぎ、稼いだ金は、蝶の採集とマニラの夜の繁華街での遊びに消えてしまう。かつて、フィリピン女性にハマった日本人男性を「ピンぼけ」と呼んでいたが、まさに著者はその状態で、マニラでの貧しい生活は、むしろ↓こちらの本に登場しそうな勢いだ。
「蝶への思い」から、マニラでの自堕落な生活から抜け出し、著者は「虫屋」として世界中で蝶を探し始めるが、そこでも困難とハプニングは続く。「ミオコエンシストリバネアゲハ」の生態観察を目指してパプアニューギニアのデューク・オブ・ヨーク諸島へ行って「呪い」をかけられ、ブーゲンビルの紛争に巻き込まれそうになり、キューバでは、大型ハリケーンの直撃に遭遇し、高潮で流されそうになる。インドではなんと冤罪で懲役8年の判決を受け、半年以上も身柄を拘束されるのだ。
蝶に夢中で、儲けなんかあまり考えてない。自由奔放すぎて定職にはつくのは無理、という性格ゆえに恋人とも気まずくなる。そもそも女性関係も、二股どころか、三股もかけてしまう自由さ。挙句の果てに結婚した女性にも、愛想を尽かされてしまうのだ。新婚旅行中、見つけた蝶を追いかけ、完全に妻のことを忘れてどこまでも行ってしまったのだから、そもそも最初から、結婚生活は危うかったのかも知れない。
また本書には、他の「虫屋」たちの生態も描かれているが、なかなかスゴイものがある。上半身裸で奇声を上げながら、ダニがいっぱいいる藪に突っ込んでいく伝説の採集家とか、本当にどうかと思う。
さて、人の親なら息子にこんなふうになって欲しくはない、と思うのが普通だろう。しかし、めちゃくちゃでありながら、著者の人生は、ありふれた日本人の何倍も濃密で面白さに満ちているのも確かだ。「子どもは虫を採れ!」の教育法はあながち間違ってはいないのかも、とつい思ってしまうほど、魅力的である。
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同じ著者による「昆虫採集界」の生態がよくまとまった一冊。
おなじみのお三方で、こんな本も。虫屋の死亡率は高いようだが、ホントに生き残れるか?