今日のHONZ本編は栗下直也のマニアックな3冊だ。そのうちの一冊は『反社会的勢力』。たしかに最近、新刊新書コーナーで暴力団関係の本を目にする。とりわけ溝口敦は池上彰風の「です・ます調」で書かれた『暴力団』を2011年9月に出版して版を重ねている。さらに紳助事件を書き加えて新書化した『山口組動乱!!2008-2011』を2011年12月に、そして今月『抗争』を出版した。ほかにもHONZメンバーにファンが多い鈴木智彦が2011年12月『ヤクザと原発 福島第一潜入記』、2012年3月に『ヤクザ300人とメシを食いました!』を出版予定だ。ボクが最後に歌舞伎町に行ったのは20年以上前だ。以来、ヤクザ本体どころかヤクザっぽい人すら見かけることがなかったので、じつは新鮮なネタに見えるのかもしれない。はたまた天変地異や経済危機、政治空白を目の前にして、清濁併せ飲む古き良き昭和に思いをはせているのだろうか。
ともあれ、本書は「山口組3代目・田岡一雄 全国制覇と殺しの系譜」「大阪戦争-組長を撃った男・鳴海清の最期」「山口組4代目・竹中正久暗殺現場の壮絶」の3章からはじまり、「残忍な仇討ちを重ねる九州抗争はなお続く」までの11章建てのスペクタクルだ。「です・ます調」の『暴力団』とはまったく異なり、映画のような光景を隠語を使いながら、とはいえ淡々と記述する。
たとえば第2章では、山口組の4次団体切原組が大阪キタの賭場で横着なマネをする。「サゲ銭なし(金を持たず)、口張り(金を張らず、口でいう)を繰り返し、拳銃を取り出して、これで100万円のコマ(掛け金)を回せと凄んだ」。賭場を開帳していた溝口組は切原組の組員3人を射殺。やがて殺し合いはエスカレートし、大日本正義団会長の吉田芳弘が殺される。「組員の鳴海清は火葬した芳弘の遺骨をかじって、必ず田岡に多い知らせてやると誓っていた」。うはー!親分の遺骨かじって復讐を誓うヤクザ!「鳴海清は腹にダイナマイトを巻き、ポケットに手榴弾を入れて、いつでも自爆攻撃する覚悟を決めていた」のだが、死体で発見される。白骨化した死体を検証すると「前歯4本が折られ、手指の爪は3本を残して抜かれ、右足の爪もはがされていた」という。おとろしいのー!ちなみに第2章は18ページしかないのにこの濃密さだ。