今日の「新刊ちょい読み」は、芥川賞でも直木賞でもなく、小学館ノンフィクション大賞の受賞作品をご紹介。
時を遡ること40年前の1972年、アジアで初めての冬季オリンピックが札幌の街で開催された。このオリンピックには、台湾という国が宿命のように背負い続けてきた苦難と、激しい政治的抗争の爪痕が刻まれていたのだという。
オリンピック開催の前年、台湾が国連を脱退した。そんな中、当時の総統・蒋介石は札幌オリンピックに8人のスキー選手を送り込む。この大会に「中華民国」の名を刻めば、中国に傾いている国際社会を引き戻せる ― そんな思惑に基づいた「最終兵器」であった。
しかし亜熱帯の国・台湾で生まれ育ったメンバーの大半は、スキーの未経験者達。日本人監督と草津で必死の合宿を行うのだが、一向に上達しない。そんな勝ち目の見えない選手たちに求められたのは、勝利ではなく完走。なんとかゴールすることで記録を残す、そんなミッションを背負いながら選手達は当日を迎える。はたして選手たちは無事完走できたのか?
そして、その後も運命は選手の人生を翻弄し続ける。政治とスポーツの狭間で揺れた積年の思い。40年前から見続けてきた札幌の雪景色は、今の台湾を見て何を思うだろうか。