今年最後のちょい読みは、うん、この話題で。いかん、間違えた。ウンコの話題で!本書は寄生虫博士・藤田 紘一郎氏の自叙伝的な一冊。その人生の節目節目に、大きくウンコが関与する。
子供の頃は、芋や野菜の肥料に使うためのウンコ運びをしながら、すくすく育った藤田少年。医学部時代に、トイレでばったり出会った教授に声を掛けられ、熱帯病の調査に帯同したのがウンのつき。整形外科を目指していた運命が、大きく変わった瞬間でもあった。
また、医師としてインドネシアにも駐在。ウンコの流れる川で平気に遊んでいる子供たちが、日本の子供よりずっと元気であることに気付き、キレイとキタナイが逆転するくらいに人生観が変わったそうだ。
一方で、専門家らしくウンコの分析にも余念がない。これまでにウンコ集めのために訪れた国は70か国。世界中から集めたウンコの数が10万個近く。その大量のウンコを情報源とし、数々の知見を生み出している。
例えばその一つに、日本人のウンコの減少化ということが挙げられている。戦前の日本人のウンコは、一人あたり350~400グラム。それが今では150~200グラムまでに減少。これは、日本人の食生活が欧米化した結果、腸内細菌の餌である食物繊維の摂取量が極端に少なくなったことに原因があるそうだ。
しかも、ウンコの大きさが自殺率と大きく関係するとまで言うから驚く。食物繊維摂取量が多くウンコも大きい、ウンコ先進国のメキシコを見てみると、自殺率が非常に低いという。例外もあるのだが、概して食物繊維を多くとっている国ほど自殺率も低い傾向にあるのだ。
著者いわく、長年のウンコの研究によって最も役立ったのは、誰もが嫌う寄生虫やウンコを対象とすることで、嫌われ者の気持ちがよく分かるようになったことであるそうだ。その結果が、人とは違った視点から物事を捉えるということに結び付いたというから、人生なんてわからないものだ。うん、これ大事!
それでは、みなさん良いお年を!