たかが数十年と言われるインターネットの歴史であるが、先祖を遡れば19世紀まで行き着くという。いわゆるモールス符号などでおなじみの通信手段「電信(テレグラフ)」のことだ。本書はヴィクトリア朝時代のインターネットとも言われる「電信」の歴史を、ダイナミズムたっぷりに描いた一冊。
歴史は繰り返すとはよく言ったものだが、その模様が生き生きとしたエピソードとともに伝えられている。犯罪や軍事利用がサービスの普及に貢献したのは想像に難くないし、ソー活、ソーシャル婚、ハッカーなどの原型も1800年代のイギリスに見ることができるのだ。
このように歴史を辿っていくと、当然のようにその興味は衰退のメカニズムの方へと向かう。電信はやがて「話す電報」としての電話に取って変わられることとなる。ここで興味深いのは、電信によって世界が革命的に小さくなったことが、電話の躍進にも一役買っているということである。ネットワークサービスの宿命は、自分が滅ぶための下地を己の手で作っているということにあるのだ。今風に言うならば、Facebookを凌駕するサービスが、Facebookを通じて拡散していくということに近い。
執筆が1997年とのことなので無い物ねだりになってしまうのだが、欲を言えばもう少しソーシャル的なものへの言及が欲しいというところだろうか。