著者はフリーランスのサイエンスライター。原書はNature’s Patterns3部作の第2作だ。3部作とは『Shapes』『Flow』『Branches』。日本語版はそれぞれ『かたち』『流れ』『枝分かれ』だ。ここ1-2年、『土の文化史』や『砂』、『柑橘類の文化誌』、『フクロウ』など身近で基礎的な物質や物性、生物についての出版が続いている。すべて翻訳もので、テーマに関する科学、アート、歴史、人などが大胆に組み込まれ、知的豊穣感あふれる本ばかりだ。21世紀にはいって知識の蓄積と整理が進み、それらが検索可能になったことで、20世紀の百科事典の1項目が単行本となって飛び出してきたという印象なのだ。そのためいちいち新刊に付き合っていてはつらいのだが、ついつい手が伸びてしまう。
このシリーズの特徴は豊富な図版。レオナルド・ダ・ヴィンチによる流水のスケッチ、上空からみた雲の渦列、マントルプルーム、回転ドラム内の粒子の混ぜ合わせ、「自己推進粒子」がつくるパターン。1ページ目から読み通すというよりも、気に入った章をつまみ読むほうが良いかもしれない。