今、『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』が話題になっています。確かに自分も…という心当たりのあるビジネスパーソンも多かったのでしょう。これが読まれたことで、読書量がどーんと増えたらものすごく嬉しい話です。で、話題沸騰中の著者、三宅 香帆さんが早くも新作を発売しました。それが『娘が母を殺すには?』です。
昨今大きなテーマとなっている母と娘の関係。それはフィクション、ノンフィクション問わず様々な本でもテーマとして掲げられています。いわゆる「母」の呪いに、小説やマンガ、ドラマや映画といったフィクションはどう向き合ってきたのかをぶんせきしていきます。古典名作に限ることなく、最近の『SPY✕FAMILY』なども取り上げられているので、読書ガイドとしてもオススメです。
それでは、この他5月新刊から気になる本を何点か紹介していきます。
HONZ読者にはおなじみの『室町は今日もハードボイルド』の著者、清水克行さんが新刊を刊行しています。週刊文春の連載エッセイの書籍化ですが、まさに日本史エンタメ。身近な題材から500年前の日本社会を読み解きます。今では信じられないことから、500年経っても人は変わらないのね…といった話まで、歴史が身近になる1冊です。未読の方は前作レビューからどうぞ!
もはや「海賊もの」はノンフィクションの1ジャンルになっている気がします。そんなみんな大好き海賊ノンフィクションに新作が登場。今回は、どうすれば海賊になれるのか?というテーマで、船上生活の掟や戦い方、知っておくべき伝説の海賊、さらには引退後の生活に至るまで海賊を丸裸にする1冊。欧米の有名海賊だけではなく、村上水軍や倭寇といった名前も出てきます。
海にまつわるノンフィクションからもうひとつ。こちらは深海に挑んできた深海飛行士たちの歴史と未来を描いた科学ノンフィクションです。
宇宙への挑戦は日々ニュースなどでも大きく取り上げられていますが、深海の方はそうでもありません。足もとに広がっているのに、未知の部分が多いのが深海。それこそ、沈没した豪華客船もあれば、様々な未知の生物もいて、なにより海底の詳細図も存在しない、のが海の底です。未来を考えるために知っておきたい深海の最新。
著者はブルームバーグ通信社記者とのこと。ナチス時代、陰でナチスに協力して富を築き、未だにドイツでは大物実業家一族と言われている一族の歴史に迫ったノンフィクション。ポルシェやBMWなど日本でも馴染みの大企業の名前が出ているため、おっ!?と驚いたのですが、これ自体が著者のスクープのようです。
原著発売でも話題になっているようですが、ユダヤ人利権の差し押さえなどの事実もあった模様。今明かされる真実とは!?
こちらは格差社会のメカニズムに迫る衝撃的なノンフィクション。人種差別や不平等の助長が、一部のビリオネアの利益へと繋がっているといいます。公立学校民営化、犯罪の厳罰化と膨らみ続ける刑務所、移民取り締まり。こういった動きの裏にあるものとは。ビリオネアたちの投資や寄付は一方で、公立学校制度の解体を招き、世界最大の刑務所をつくることにも貢献しているのだそうです。人種差別にある利権に気づくことが出来る注目の1冊。
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そろそろ梅雨の季節。長雨との付き合いには本が欠かせません。ぜひ本屋さんに足を運んでみてください。