先日このコーナーで取り上げたバーツラフ・シュミルの『Invention and Innovation』には大きな反響がありました。さすが人気作家!その熱もさめやらぬなか、6月末にはもう新刊の発売が予定されています。
テーマはサイズの科学、米国では昨年発表された本ですが、早くも邦訳が登場します!『Numbers Don’t Lie』などと一緒に楽しむのが良さそうです。
このほか6月発売予定の新刊から、いくつか紹介していきます。
SF好きにオススメしたいのがこちら。もう“宇宙旅行”が現実味を帯びてきていますが、そうは言っても「星間旅行」となるとまだまだフィクションの世界の話のような気がします。何光年という距離をどうしたら旅できるのでしょうか?光子ロケットやワープ航法などを物理学者が本気で考えトラベルガイドをつくりました。宇宙に憧れる大人も子どもも大興奮間違いナシの1冊。
『マネー・ボール』の著者、マイケル・ルイスの最新作が登場します。今回の主人公はサム・バンクマン・フリード。仮想通貨取引所FTXの創業者です。100億ドルという規模の1日の仮想通貨取引をしていたFTXは、22年に経営破綻し失墜しました。しかも、破綻前に顧客口座からお金を盗んでいたことも発覚。世間を騒がす主人公となったサムをルイスはどう描くのでしょうか。
コロナ禍中から高まってきた「利他」への関心。本を見渡しても「利他」とタイトルに入った本が増えています。しかし、リチャード・ドーキンスの名著にあるとおり、遺伝子は利己的だと言われてきました。利他は遺伝子論的にどう考えるものなのでしょうか。本書では人間にもともと備わっている利他性とその仕組みを考えます。これを読めば人間関係も経済も上手くまわるようになるかも!?
どこかに行くあてがあってもなくても、地図を眺めているのは楽しいもの。とはいえ、地図には様々な意味、メッセージ、そして戦略が詰め込まれています。私たちになじみのある地図は、地図の広い世界のほんの一握りにすぎません。世界史において、地図製作はどうやってスタートしたのか。侵略のための地図、植民地時代の地図。比べてみると科学的でないもの、現実的でないものも色々出てきます。地図を眺めながら、地図に込められた意図について考えてみませんか?
哲学についての書き手として注目が続く戸谷洋志さん。先日発売された『親ガチャの哲学』もまだまだ話題です。新作では、いけないことに心躍らせてしまうその気持ちの謎に迫っています。なぜ悪いことは楽しいのでしょう。「いけない」と言わなきゃいけない親としては、知っておきたい気持ちです。ちくまプリマー新書なので、親子で一緒に読んで考えるきっかけを作れそうです。
米国発祥のラップは、世界に大きく広がっているそうです。今戦火のなかにある、ガザ・ウクライナ。弾圧の中にあるチベット、イラン。格差大きな国々。そういった「辺境」でラップミュージックを通じて声を上げ続ける人たちと、そこから見えてきた社会を描くという気になる作品です。もちろん、日本もその辺境の一つなのでしょう。ラップという形で言語化された民族の思いについて考える気になる1冊。
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まだ5月だというのに、各地で夏日の報告が寄せられるようになりました。これが過ぎるとそろそろ梅雨も見えてきます。お出かけに疲れたらぜひ読書をどうぞ!