2024年のはじまりは大きな悲劇で幕を開けることになりました。見たことのない規模の海岸隆起、航空機事故。これらは近いうちに様々な分析本が出てくることになるのではないでしょうか。こういうときに、ノンフィクションの役割を感じさせられます。
今年紹介する1冊目はこちら。
トヨタに関する本はノンフィクション、フィクションとも数多く出版されていますが、ここに大きな話題になりそうな本が出てきます。トヨタの中国事務所総代表だった服部悦雄氏という人物を主人公に、トヨタの中国進出と世襲の内幕を描く!という気になる作品。服部氏は『トヨトミの野望』に登場する「中国の怪人」だとも紹介されています。幼い頃から中国で暮らした服部氏の苦難の模様はそのまま中国史としても読めるでしょう。国と企業という大組織に翻弄された人生、興味深い作品です。
2月発売予定の新刊から、いくつかピックアップして紹介していきます。
ビジネス書、自己啓発本というのは3月~5月が売上げのピークと言われています。その中で近年注目度が上がっているのが対人関係や対話の本。様々な本が出てくる中で、学術的に対話に迫ったこちらが気になりました。極端なまでに意見の異なる人との対話がどうしても必要とされる局面があります。そんな会話の中でも守らなければならない基本的原理が「入門」に描かれ、レベルを上げていけば凝り固まった思想の持ち主とも対峙できる「達人」にも到達できるとか。分断に対抗するツールにもなるかも!?
福嶋聡さんはジュンク堂書店の名物書店員としても有名な方。出版業界人であれば知らぬ人はいない存在です。福嶋さんはここのところずっと書店はヘイト本にどう対応していくべきか、という発信をし続けていました。書店は「言論のアリーナである」という帰結に達しながらも、葛藤は消えていないといいます。書店員という枠を超え思索を続ける福嶋さんの軌跡は「本」にまつわる誰もが知っておかなければならないものになるかもしれません。
阪神優勝をきっかけに様々な本が刊行されています。タイガースの歴史上「最大のミステリー」とされるのが、この岸一郎という第8代監督だそうです。昭和30年、突如タイガースの一軍監督に代抜擢された還暦を過ぎたおじいさん。しかもプロ野球経験ゼロ。
この惹句だけ見て「そこからものすごい快進撃が続くのか」と早合点してしまったのですが、現実はマンガのようにはいかず、あっという間にチームは大混乱。しかも、お家騒動体質の起点にもなったと言われる大事件に繋がっていくのだそうです。当時をしる野球人の証言で解き明かされていくこの人物の正体とは?
人は権力を持つと、巨大な建築物を建てたくなるのでしょうか。この本のタイトルを見た時、まず感じたところはそこです。正力松太郎率いる日本テレビと、前田義徳率いるNHK。テレビ黎明期から対立してきた二大メディアが計画した巨大なドームやタワー計画を巡る戦後史を描いたノンフィクション。
商品紹介ページにある“多摩丘陵に4000メートルの「読売タワー」”という文字を見てまだ目を疑っています。4千!?
刊行が発表されるや否や、話題沸騰の作品を最後にご紹介。様々な大全が出版されていますが、ついに「マウンティング」とは。そしてそれで人生を整える!?とは。
マウンティングの事例を収集し、分析し研究してきたからこそ書けたマウンティングの研究本です。ある意味これも対話本として店頭に並んでいくのでしょう。AIでは代替出来そうにない人間関係についての注目の1冊。
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今月は翻訳出版が少し少なかった印象があります。悲劇的な事件の一方で、株式市場は高値を更新し続け過熱感が満ちています。こういうときだからこそ、何故か、という根幹を知るための努力を続けたいもの。良い読書時間をお過ごしください!