2024年のスタートは、大きな災害、事件とともに幕開けすることになってしまいました。いつもであれば、年のはじまりとその年の幸せを祈る穏やかな日になるはずが、恐怖と悲しみが続く日々に変わってしまいました。
こういった危機の時には改めて「人を助ける仕事をしている人」が様々なところにいらっしゃる事に気づかされます。今回紹介する1冊は、山岳救助、しかも難易度が高く最近も遭難のニュースが多い剱岳を守る富山県警の山岳警備隊の活動を追った『剣の守人』。
発足の歴史から、登山史に残る遭難事例などを描きつつプロ達の活躍を追ったルポルタージュです。
それでは、この他12月新刊から注目した本いくつかを紹介していきます。
ここ数年、昆虫の種何十万種もが絶滅の危機にあるというニュースが立て続けに報じられています。一方、害虫は増加傾向にあるという話題も… 昆虫がいなくなったら人間も大きな影響を受けると言われています。いったいどれほどの悪影響があるのか、昆虫を減らしているモノはなんなのか。昆虫と人類はどう共生していったらいいのか、など、これからの人間の生活について考えるための1冊。
先月は事件モノも多く発売されています。その中から2点をご紹介。
実在した「大泥棒」、世間を賑わせた「大脱走」、そんな実話を新聞風イラストで紹介した作品。映画やドラマの題材にもなった事件も多く収録されています。モナ・リザを白昼堂々盗んだ大泥棒、260万ポンドを強奪した列車強盗。難攻不落といわれるアルカトラズ刑務所からの大脱獄。
どれも実話なので、笑ってしまったら不謹慎かもしれませんがどれも命がけの冒険譚。
昨年、私人逮捕系YouTuberが話題になりましたが、世界には好奇心や執念でものすごい事件を解決した一般市民の探偵たちがいます。以前にも紹介した『黄金州の殺人鬼』を追い詰めた人もその一人ですが、身元不明遺体の頭蓋骨から似顔絵を描いて家族に帰した人、猫の虐待動画の犯人の割り出しに執念を燃やす人、などなど。そんな市民探偵への取材から彼らの正義を描いています。
著者のダロン・アセモグル教授は『国家はなぜ衰退するのか』等の著書を送り出してきており、最近ではAI開発について「一部のエリートだけで意思決定させてはいけない」といった警告を発しています。そんな彼の研究をまとめたのがこちら。過去1000年間、技術開発が歴史にどう影響を与えているかを俯瞰したとき、ほぼそれが一部エリートに富をもたらすもので、進歩が社会的な不平等を増大させていると言っています。その現実と対峙する方法はあるのでしょうか?
『時間は存在しない』『世界は「関係」でできている』など、物理学の最先端を解説した著書をベストセラーにしてきた、カルロ・ロヴェッリのコラム集。彼の母国、イタリアで様々な媒体で執筆したコラム集です。物理学はちょっと…と尻込みしてしまう人には導入の1冊としてもオススメ。
昨年は世界的に「禁書」の動きが拡大した1年でもありました。図書館で、政治主導で…と世界各地で禁書をめぐる話題が事欠きません。今では「出版の自由」は当たり前の事になっていますが、背中合わせに自由の危機があることを感じます。
この本は「検閲」の歴史を紐解いた作品です。“検閲官”という人がいたというよりは、本作りから流通、はたまた図書館まで様々な場所に「検閲」は浸透していたようです。未来について考えるためにも知っておきたい歴史でしょう。
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ショッキングなニュースが続き、心が疲れることもあるでしょう。東日本大震災の時も「本の力」が見直された動きがありました。これからの1年をどう過ごすのか、改めて考えるために書店でノンフィクションコーナーに行ってみませんか?