1981年に刊行された『窓ぎわのトットちゃん』は現在まで読み継がれ空前のベストセラー、ロングセラーとなっている。日本人のほとんどが「トットちゃん」は黒柳徹子のことだと知っているってすごいことだ。
さらに芸歴70年で今も第一線で活躍し、冠番組の「徹子の部屋」は2023年9月に、同一司会者によるテレビ番組最多放送のギネス記録を更新した。黒柳徹子さんは生ける芸能史そのものなのだ。
前作の『窓ぎわのトットちゃん』は普通の小学校には馴染めないちょっと風変わりな女の子である徹子が、両親の愛とトモエ学園という自由な学校に育まれて伸び伸びと育っていく姿を描いていた。
42年ぶりの続編はパパとママの話から始まる。日本を代表するヴァイオリニストの黒柳守綱が東洋音楽学校に通うママと出会ったのがベートーベン第九交響曲の演奏会の舞台だったというのはロマンティックだ。
裕福な夫婦の最初の子で「トット助」と父から可愛がられ、弟妹と一緒に暮らした幸せは戦争で断たれる。ひもじさ、寒さ、空襲警報の恐ろしさに加えて、泣くことも許されない戦争へ父親が出征したのが昭和19年。ヴァイオリンを持たず、頭を丸坊主にされ、ヨレヨレの軍服を着た父親の姿がよほど印象的だったのだろう。トットの記憶は精緻だ。
疎開先の青森で終戦を迎えると一家は東京に戻る。女学校に通い思春期を迎え、父がシベリアから復員した後にトットが決めた将来は”子どもに上手に絵本を読んであげるお母さんになる”こと。その修業のために選んだ仕事が70年も続くことになるとは想像もしてなかったに違いない。
この先の話は映画やテレビドラマにもなった『トットチャンネル』(新潮文庫)に詳しいが、空白だった少女から大人になる時代を描いたのが本書だ。 精力的に戦争反対を訴え続け、ユニセフで子どもたちを支える活動の源はここにあった。 (週刊新潮11月2日号)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
2023年10月時点で全世界累計発行部数は2500万部を突破。1981年、この本の印税全額を使って「社会福祉法人トット基金」が設立された。(Wikipedikaより)