先月出た本 2023年9月

2023年10月2日 印刷向け表示
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9月は『イーロン・マスク(上・下)』の発売が大きな話題となりました。レビューのほか口コミでも、その面白さが話題になっていますが、ノンフィクションがベストセラーランキングの上位にいるのも久しぶりのこと。読書の秋のスタートに相応しい号砲が鳴らされた感があります。大物新刊として忘れてはならないのが『万物の黎明』。私たちに“ブルシットジョブ”という便利な言葉を教えてくれた、デヴィット・グレーバーの最新作にして遺作です。

作者: デヴィッド・グレーバー,デヴィッド・ウェングロウ
出版社: 光文社
発売日: 2023/9/21
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これまで、様々な哲学者や研究者たちが「人間はこういうものである」と定義してきた、その人類の姿や文明の姿を根本から覆す研究成果。700ページを超えるボリュームですがぜひ挑んでみてください。

それでは、この他の9月新刊から注目した本いくつかを紹介していきます。

作者: 古田 徹也
出版社: 柏書房
発売日: 2023/9/27
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「謝ってすむなら警察なんていらない」というのがもめ事の時の常套文句の一つ。いや、そもそもじゃあ「謝る」ってどういうことなでしょう。下手に土下座なんてしたらかえって怒らせちゃったりするし…一方で、現代社会においては「そこは謝るべきところだったのか」といういわば不必要な謝罪も見受けられます。

 この本では様々な謝罪のケースを取りあげながら「謝るとは何をすることなのか」を解き明かしていきます。強盗の加害者から被害者、医療過誤、戦後責任など様々な事例が取りあげられた注目本。

作者: マリーケ・ビッグ
出版社: 双葉社
発売日: 2023/9/21
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医学は長らく「男性の身体」を基準にしてきた、といいます。そのため、人間の測り間違いや、不平等が起こり、結果健康を害し続けている。と著者は説いています。こういった医療にまつわるジェンダーバイアスがなぜ起こったのか、その結果どういうことが起こっているのか。これを是正するすべはあるのか?という医療と性差別についてのノンフィクション。心臓発作を“ヒステリー”と言われて誤診されているなんてことがあるというのは衝撃的なことです。そして鎮痛剤の利用についても、同量であれば女性は男性に比べて中毒になる可能性が高い、など。知らなかったことだらけ。

作者: 畑中 章宏
出版社: イースト・プレス
発売日: 2023/9/26
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先に紹介した「謝罪」にも深く関係しそうな1冊がこちら。喜怒哀楽というのは、全ての人に同じようにあるものではないのです。時代によって、慣習によって変わってくるのが「感情」。だからこそ掴みづらいものなのかもしれません。

その「感情」がどこからくるのか、そして“どこに”あるのか。なんなのか。など、感情というものを様々な角度から考えてみたのがこちら。

SNS全盛時代の絵文字による感情伝達について考えるきっかけにもなりそうです。

作者: セス・スティーヴンズ=ダヴィドウィッツ
出版社: 光文社
発売日: 2023/9/21
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“ビッグデータ”という言葉が世に広まるにつれ、自分の事をデータで把握されるということを嫌がる人が増えてきた気がします。コンピュータに何かを決められるなんてもってのほか。という気持ちの人も多そうです。

これはそういうデータ嫌いの気持ちを一刀両断しちゃいそうな研究書。データサイエンスの多様な研究を紐解いていくと、結婚も、家探しも、子育ても就職も…そういった人生の一大事はデータに基づいて行った方がより良い判断が出来るという事実が見えてくるそうです。データを信じて生きていけば幸せになるのでしょうか…?米国事情がふんだんに入った本のため、そのまま日本人に読み替えるのは難しそうですが、データに使い方としてこういった一面もある、と読むには面白そう。

作者: マイケル・フィンケル
出版社: 亜紀書房
発売日: 2023/9/29
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アート界の裏にまつわるノンフィクションにはついつい目がいってしまいます。こちらは「現代のアルセーヌ・ルパン」と言われた美術品泥棒のお話。ヨーロッパを股にかけて活動したこの泥棒は、ヨーロッパの170超の施設から、約250点の美術品を盗み出したと、いうのです。しかも道具はアーミー・ナイフ1本。彼は屋根裏部屋に飾って眺めるためだけに盗み続けたといいます。01年に逮捕されたこの「美術泥棒」はいったい何者だったのでしょう。

いよいよ読書の秋。ここから出てくる新刊も注目書が盛り沢山ですが、動きの早い店頭で気になる本をお見逃しなきよう!!

決定版-HONZが選んだノンフィクション (単行本)
作者:成毛 眞
出版社:中央公論新社
発売日:2021-07-07
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『決定版-HONZが選んだノンフィクション』発売されました!