年々桜の開花が早まっています。今年も早い春が始まったようです。AIの急激な進化を目の当たりにし、これからの世の中について、人間の心と脳について考える本に注目が集まってきているようです。そんな中大きな話題になっている本があります。それが『くもをさがす』
直木賞作家の西加奈子さんが初めて描いたノンフィクション作品がこちら。そしてテーマは自らを襲ったがんとの戦いです。
2021年のコロナ禍中、滞在先のカナダで乳がんが発覚、寛解までの約8ヶ月間が克明に描かれています。すでに各界からは感動と絶賛の声が届いている作品。話題になることは間違いなさそうです。
今月も気になる本がいっぱい見つかりました。その中からいくつかを紹介していきます。
AIの進化により仕事のあり方がものすごいスピードで変わってきています。が、その裏には数え切れない「見えない労働者」が存在しているようです。
ゴーストワークとは、法で定められているような最低賃金よりも少なく、健康の保証も、雇用の保障もない仕事たち。過労と過少な賃金に苦しむ人たちはますます増え続けているようです。オートメーション化されたサービスの裏側の実態と、そこに対して出来るべき事は何なのかを考える作品。
スザンヌ・オサリバンはかのオリヴァー・サックス(『妻を帽子と間違えた男』などの)の後継者と言われる人だそうです。脳神経外科であるスザンヌは、原因不明の病に苦しむ人々を調査するべく世界各地を訪ね歩いています。たとえば、ストックホルム郊外で急増した「あきらめ症候群」、カザフスタンの鉱山町に発生した「眠り病」など。心因性疾患は複雑で、土地や民族に大きな影響を受けているということもあるそうです。症例から見えてきたこととは。
著者は「アットホームチャンネル」というYouTubeチャンネルでホームレスへのインタビューを続けています。そこから見えて来たのは新たなホームレスの姿。近年は10代~20代という若い世代、まさにZ世代のホームレスが増えているのだそうです。路上生活をするわけではなく、ホテルやマンガ喫茶などで生活をする姿は従来のホームレスの姿とは一線を画します。なぜその生活を選んだのか、4名のホームレスに密着取材しそこから見えた問題に警鐘を鳴らします。
著者のマリア・レッサはノーベル平和賞を受賞しています。フィリピンでの権力濫用などの実態を報じ、ドゥテルテ政権の暴力的な麻薬撲滅キャンペーンに注目を集めました。また、ソーシャルメディアによるフェイクニュース拡散の実態にも踏み込みました。その後脱税の嫌疑などもかけられましたがこの度無罪に。その戦いの記録が1冊にまとまりました。
2021年度グルマン世界料理本賞受賞作。原著発売から大きな話題となった1冊です。著者、ヴィトルト・シャブウォフスキはかつて独裁者と呼ばれた人たちのために料理をつくった料理人を探し出しその模様を聞きました。独裁者たちも料理の前では悪ふざけをしたり、子どもの頃を懐かしんだりと普通の人と変わらぬ姿を見せていたようです。料理人自身もかなり独特とも言える人生を歩んでいるようです。
春、そして大型連休が近くなり図鑑売場も活況を見せてくれそうです。ちょっと変わり種で気になったのがこちらでした。現代では子どもたちに大人気のカブトムシ、クワガタですが昔はそれほど人気がなかったようです。もちろん江戸時代の方が今よりも虫は多かったでしょうが、人気の虫も違ったし、駆除された虫も違ったようです。さらには虫のおかげで観光地になったような場所もあったとか。歴史&虫好き両方が楽しめる江戸の虫事情!
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コロナ禍の始まりから3年。規制のない新しい春が始まります。コロナ禍中は読書の機会が増えたという方の多い時期でもありました。外に出ることは増えても、読書の機会は変わらずに作っていただければ嬉しいです。書店店頭には興味深い新刊が続々と並んでいますよ!