10月末から11月の上旬は読書週間です。読書関係のイベントも多くなり、出版業界も盛り上がっています。ノンフィクションジャンルも豊作です。そんな中でも特に注目したいのがクリスパーにまつわるノンフィクション本。
遺伝子編集技術「CRISPR」の生みの親ジェニファー・ダウドナの評伝『コード・ブレーカー』がいよいよ発売になります。日本でも大ベストセラーとなった『スティーブ・ジョブズ』を描いたウォルター・アイザックソンが描く評伝ということで、世界的にも話題となった超大作です。
また、同時期にはそのクリスパー技術の光と影を描いた『ゲノム編集の世紀: 「クリスパー革命」は人類をどこまで変えるのか』も発売されます。11月のサイエンスコーナーはクリスパー一色になりそう!
これから出る本は他にも注目本がいっぱい。気になったものをいくつか紹介していきます。
11月はサッカーワールドカップが開催される月でもあります。それにあわせてサッカー関連のノンフィクションも多く出版されてきそう。中でも気になったのがこちら。世界の様々な場所で、様々な環境で、そして様々な人たちに愛されるサッカー。世界の様々な場所でサッカー民の話を聞き、そこから見えてきた世界の様子を描いたルポ。
前作『エンド・オブ・ライフ』でYahoo!ニュース|本屋大賞2020年ノンフィクション本大賞を受賞した佐々涼子さんの最新刊が登場。ウィシュマさんの死亡事件で、日本の入管の様子や難民問題が注目を浴びています。そういった問題を追ったノンフィクション。難民のために戦い続ける難民弁護士の姿や、入管週間中の在留外国人の姿など報道されない現実が見えてきます。
『慟哭の谷』など、ヒグマ被害にまつわる本はHONZでも人気です。実際にクマ被害が広がっていることもあり、さらに注目度は高まっていくでしょう。そんなヒグマノンフィクション界に新たな作品が登場。こちらは北海道の人喰いヒグマ事件を膨大な歴史資料から発掘し、ヒグマ禍について改めて考える1冊。
ヒグマの聖地を人間が開拓していった歴史、そして現代社会で広がる新たなヒグマ禍についてまとまっており資料としての価値もありそう。
AID、非配偶者間人工授精をめぐる課題は日本でも話題になりつつあります。不妊治療の延長にある技術で生まれた子どもたちは、その事実を知ってからの苦悩を抱えるようになっています。
そういった人の苦悩、そして出自を知る権利をめぐる取組や海外の最新事情などを広く調べた1冊。
言語がどうやって創り出されていくのか、ということに挑んだ作品です。
ジェスチャーゲームでは相手に何かを伝えるために、身体を動かしてヒントを与え続けますが言葉も同じなのだそうです。そのやりとりの中で、言葉は体系化されていくとのこと。
即興の積み重ねで言語が生まれてくるというのは画期的な考え方と言われています。言葉が発明されていく過程を考えるノンフィクション。
第20回開高健ノンフィクション賞の受賞作となった作品がいよいよ出版されます。連合赤軍のリーダー・森恒夫を題材にした意欲作。著者は大学院時代に森恒夫の手紙に出会ったそうです。あさま山荘事件で警察との銃撃戦を繰り広げ、総括という名の同志殺人を繰り返した連合赤軍。この存在は、学生運動を衰退させることに繋がりました。事件から1年後に拘置所内で命を絶った森恒夫という青年がなぜ革命を起こし、なぜ同志殺人を起こし、そしてなぜ命を絶ったのか。同級生や後輩、生き延びた連合赤軍の元メンバーたちとの対話の中から見えてきたものとは…
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コロナ禍による行動制限が緩和されたからか、国内のルポ、ノンフィクションが増えてきた気がします。読んでも読んでも、面白い本は尽きなそうです。読書の秋をお楽しみください!