コロナ影響で自殺者が増加したというニュースが駆け巡りました。パンデミック関連の書物の出版は少し下火になってきた感もありますが、自殺や貧困といった社会問題に取り組む本の出版計画が増えてきているようです。予約ランキングにも『ルポ自殺』が入ってきています。
著者の渋井哲也さんは長年にわたって自殺問題を取材し続けてきました。今の時代をどう見ているのでしょうか。
この他2022年8月18日時点の予約受注実績からこの先発売になるタイトルを抽出しノンフィクションの予約ランキングを作成しました。(日販調べ:タイトル・発売日等今後変更になる可能性があります)
出版社 | 商品名 | 著者名 | 本体価格 | 発売予定年月日 |
徳間書店 | 『安倍晋三の真実 安倍家三代』 | 大下英治 | 900 | 20220908 |
小学館 | 『日本鉄道大地図館』 | 小学館 | 36,000 | 20220929 |
笠間書院 | 『日本怪異妖怪事典 中部』 | 朝里 樹 | 2,500 | 20220826 |
講談社 | 『重力のからくり』 | 山田 克哉 | 1,200 | 20221020 |
講談社 | 『民主化する中国 習近平がいま本当に考えていること』 | 丹羽 宇一郎 | 660 | 20220915 |
東京大学出版会 | 『スポーツで地域を動かす』 | 木田 悟 | 3,400 | 20221012 |
吉川弘文館 | 『人物で学ぶ日本古代史2』 | 新古代史の会 | 1,900 | 20220928 |
河出書房新社 | 『JAL裁判』 | 青山 透子 | 1,700 | 20221025 |
大月書店 | 『改訂新版 統一教会とは何か』 | 有田 芳生 | 1,500 | 20220921 |
河出書房新社 | 『ルポ自殺』 | 渋井 哲也 | 880 | 20220829 |
この他、これから出る本リストから注目作品を紹介していきます。
原題は『The Journey of Humanity』。著者は「統一成長理論」の父と言われるイスラエル出身の経済学者で、ノーベル賞に近い存在と言われ続けています。経済成長と格差をめぐる謎に迫ったこの著作は世界30カ国以上で発売された話題作品となっています。人類は徐々に繁栄してきたわけでなく、長い期間飢えや病と闘う過酷な状況が続き、ある時期から急に繁栄を始めたのだ、と著者は説いています。繁栄局面に入ったのはたった数百年前のこと。ではいったい格差はどこで生まれたのか?というのがこの本が投げかけている謎です。ユヴァル・ノア・ハラリの邦訳時のような大ベストセラー化を期待したい大型新刊です!
ウクライナ戦争を受け、戦争関連書の出版も多くなっています。こちらは、侵攻後、専門家として多くの場所でコメントもされていた小泉先生の著書。各界の専門家と語り合う対談集となっています。
戦争関連書では『戦争はなくせるか?』にも注目です。原著は侵攻前の出版ですが、人類の歴史は戦争の歴史でもあると言われる中、戦争をなくすことができるのか?という問いに正面から挑んでいます。
辺境ノンフィクション作家として有名な高野秀行さん。様々な国で壮絶な体験をしていますが、その体験を支えたのは語学でした。学んだ言語は25以上!辺境の言語を学ぶときはどうしているのか?どうやって様々な言葉を覚えているのか、気づけば語学オタクとなった著者による語学青春期。
犯罪ノンフィクションからは2本をご紹介しましょう。この『ヴィクトリア朝の毒殺魔』は切り裂きジャックの凶行から間もない時期に発生した連続毒殺魔事件。9名の女性を手にかけたこの犯人は医師だったそうです。スコットランドヤードとの闘いを描いたノンフィクション。同時期に起きた有名な「切り裂きジャック」事件については、被害者5人の人生に目を向けた『切り裂きジャックに殺されたのは誰か: 5人の女性たちの語られざる人生』が発売予定です。
発売前からすでに話題になっているのがこちら。2020年、Black Lives Matterの運動が広がる中、アメリカで出版され大きな話題となった作品です。人気司会者オプラ・ウィンフリーが絶賛したことで大ベストセラーとなり、高い評価を受け、時には論議の中心となりました。
アメリカの人種差別問題の根底にも「カースト」の構造があると指摘し、歴史的にこれがどう確立し、はびこっていったのかを論じています。多様性ある社会を目指すなか、読んでおきたい作品です。
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秋の気配は見えてきたものの、まだまだ暑い日々が続きます。涼みながらゆっくりと読書をお楽しみください。