あまりに早い梅雨明け、そして記録にないほどの猛暑…と通常の6月とは違った景色が広がっています。気候変動に関する取組や、今後の経済成長について考える本が増えて来ているのも、こういった気候の変化が体感としてわかるくらいになってきたからでしょう。
ウクライナ情勢関連では地政学への注目が集まっています。ここのところは資源関係の本の動きもよくなってきているようです。そんな中、新書の新刊ではエマニュエル・トッドの『第三次世界大戦はもう始まっている』などがヒットしています。また、『溶ける』で自らの転落を赤裸々に描いた、大王製紙前会長による刑期満了後の姿を描いた新作、『溶ける 再び』なども話題になっています。
それではここからは、6月に出た注目作品をいくつか紹介していきます。
2020年のコロナ急拡大以降、極めて早いスピードでワクチン開発を成し遂げたファイザー社。その内幕、裏側を描いたノンフィクションです。
これまで、mRNAワクチンの開発を描いた本はいくつか出てきていますが、今回はファイザーのトップ、アルバート・ブーラの著書ということでビジネスパーソンにとっても興味深い話がいくつもありそうです。
終戦記念日に向け、過去の戦争を振り返る本も増えてきました。こちらは、新たな資料が明らかにした原爆投下への新真実を明らかにした作品。実際にマンハッタン計画に参加し、原爆投下直後の日本での調査にも参加した医師が残した記録です。
先月紹介した『ボマーマフィアと東京大空襲』もそうですが、悲劇的な攻撃に至るまでの、アメリカ国内での議論や葛藤を描き出す本が目立ちます。
戦争関係としてはこちらも忘れてはいけない1冊です。2019年12月に、ワシントン・ポストが独自に機密文書を入手し、米政府の真実を明らかにしたというニュースは大きな話題になりました。ベトナム戦争時にリークされた「ペンタゴン・ペーパーズ」を彷彿される「アフガニスタン・ペーパーズ」を名付けられたこの報道記事は全米を揺るがします。アフガニスタン戦争の泥沼でどれだけの命やお金を消費してきたのか…また、これがワシントン・ポストの調査報道で明らかになったものであったこともメディア関係者には衝撃を与えました。待望の邦訳です。
世界的にあまり知られていない言語を100以上集め、その地域・言語の歴史や話者の現状を紹介している図鑑のような1冊。見ているだけでも楽しいです。
地域によっては、同じ国のほかの住人にはほとんど理解出来ないような言語があるところもあるそうです。それはなぜなのか、関係ない場所で似た言語が確認されるのもなぜなのでしょう?
オーストラリアの先住民族というと、狩猟民族という印象があります。そのイメージが大きく転回する機会となったのがこちらの作品。実はオーストラリア先住民は有史以前から、高度な農耕をし、養殖を行って暮らす定住文化を発展させていたのだそうです。
残された歴史資料を読み解いて見えてきた真実はオーストラリアを揺らしました。原著はオーストラリアで大ベストセラーとなった作品。
活版印刷の父、グーテンベルクの名前は有名ですが、アルド・マヌーツィオを知っているという人は格段に少なくなるのではないでしょうか。活版印刷技術の発明からわずか半世紀後、今われわれがなじんだ本の体裁がたった一人の人によって産み出されていたそうです。
目次、序文、ページ数、索引、強調、そして文庫本サイズなどなど。出版関係者必読の1冊。
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暑い日が続いています。今年の夏はこれまでにない猛暑、そして節電や値上げなど多くのものとの闘いを強いられそうです。どうしたらこの世の中が良くなるのか、答えや提案を本の中に見つけてみませんか。