《鳥ものノンフィクションに外れなし》
予てから私が提唱している法則だ。鳥に関する、あるいは鳥に関わる人物を取材した本はほぼ100%面白い。鳥を愛する人は熱意にあふれ、少しだけ常人とは違っている。世間に染まらず、かといって拒むわけでもない。
本書は3年ほど前に出版された、日本最後、唯一無二の鷹使い、松原英俊に密着取材したルポルタージュだ。松原は大型の猛禽類クマタカを使って実猟する。他にも鷹匠はいるが、多くは大名など身分の高い者たちが行なっていたオオタカやハヤブサなど小型猛禽類を用いている。鷹狩を行うのは冬。山々が雪に覆われて鷹が獲物を発見しやすくなってからだ。
もともと動物好きであった松原だが、慶応大学入学後、彼の関心は冒険や探検に向かった。古今東西の冒険譚を読み漁り、単独行で山に入り、山間部の村に住み込んで様々な仕事を請け負った。どんなに貧しくてもいいから自然に囲まれた環境で生き物たちと生きたい」そう決意した松原は東北地方でクマタカを使った鷹狩をしていた沓沢朝治に弟子入りする。ここでイロハを学ぶ。
後に妻や子を儲けるが、家族より鷹が大事と言い切る松原英俊とはどんな人だろう。かなり変わっているだろうし、とっつきにくいのだろうな、となんとなく思い描いていた。
つい最近SNSの情報で、山登りやキャンプのギアメーカー「パタゴニア」がアメリカの鷹匠の映画を製作し試写会が行われるという告知をみつけたので参加してきた。
30分ほどの映画のあと、鷹使い・松原英俊とパタゴニアに勤務するファルコナー、石川和也のトークイベントがあった。司会は『鷹と生きる』の著者・谷山宏典。登壇した松原は思ったより小柄だが想像通りの山男。あまりしゃべらなそう…という雰囲気はあっという間に消え去り、饒舌で洒脱で頭が切れることがよくわかるトークを繰り広げてくれた。
楽しい1時間だった。映画のアメリカの鷹匠も威厳のある風貌で、鳥と生きていく覚悟が映像に映し出されていたが、日本人の私には松原の語りのほうが胸に落ちた。
4月末にはパタゴニア公式YOUTUBEで公開されるそうだが、4月21日から各地の直営店で試写会とトークイベントが催されるとのこと。生・松原さんはすごく魅力的です。詳しくは以下のサイトをご覧ください。
https://www.patagonia.jp/stories/game-hawker/video-116365.html