正月休みが好調だったことで好転の期待が持たれた1月でしたが、オミクロン株の拡大によるコロナ患者の再拡大は止められず大きくブレーキがかかりました。1月後半になると緊急事態宣言下のような巣ごもり需要も見えてきています。1月はどんな本が発売され、売れていたのでしょう。
日販オープンネットワークWINから1月発売のタイトルとHONZのレビュー対象となるノンフィクションジャンルのタイトルを抽出しランキングを作成しています。(2022/1/1~2022/1/31の売上)
『交通誘導員ヨレヨレ日記』からスタートし、すっかり定番のシリーズとなったフォレスト出版の実話日記シリーズ。身近にありながらも詳しく知らない仕事の辛い日常を描き、人気となっています。そのシリーズ新作はあの夢の国の経験を描いたものでした。これまでの実話日記シリーズファンだけでなく、夢の国好きにも読まれているようです。
順位 | 出版社名 | 書名 | 著者 |
1 | 文藝春秋 | 『糖質中毒 痩せられない本当の理由』 | 牧田善二 |
2 | 宝島社 | 『日本のタブー3.0』 | 望月衣塑子 他 |
3 | NHK出版 | 『日本人の宿題』 | 半藤一利 |
4 | SBクリエイティブ | 『世界史の分岐点』 | 橋爪大三郎/佐藤優 |
5 | 日経BP | 『永守流 経営とお金の原則』 | 永守重信 |
6 | フォレスト出版 | 『ディズニーキャストざわざわ日記』 | 笠原一郎 |
7 | 中央公論新社 | 『なぜ人に会うのはつらいのか』 | 斎藤環/佐藤優 |
8 | 講談社 | 『性(セックス)と宗教』 | 島田裕巳 |
9 | SBクリエイティブ | 『歴史をなぜ学ぶのか』 | 本郷和人 |
10 | 朝日新聞出版 | 『宇宙は数式でできている』 | 須藤靖 |
11 | 幻冬舎 | 『腎臓が寿命を決める』 | 黒尾誠 |
12 | 筑摩書房 | 『人類5000年史』 | 出口治明 |
13 | NHK出版 | 『ズームバック×オチアイ 過去を「巨視」して未来を考える』 | 落合陽一 |
14 | PHP研究所 | 『2025年「脱炭素」のリアルチャンス』 | 江田健二 |
15 | 光文社 | 『メタバースとは何か』 | 岡嶋裕史 |
16 | 筑摩書房 | 『邪馬台国再考 ――女王国・邪馬台国・ヤマト政権』 | 小林敏男 |
17 | 講談社 | 『平安京の下級官人』 | 倉本一宏 |
18 | 筑摩書房 | 『縄文vs.弥生 ――先史時代を九つの視点で比較する』 | 設楽博己 |
19 | 毎日新聞出版 | 『一気にわかる!池上彰の世界情勢 | 池上彰 |
20 | 筑摩書房 | 『日本語の起源 ――ヤマトコトバをめぐる語源学 | 近藤健二 |
他にも気になる新刊がたくさん!1月発売の気になった本を少しご紹介していきます。
歴史ジャンルはニッチな分野の世界史本がよく出版されていますが、こちらは「暗殺」という事に注目したもの。その歴史は4,000年以上に及ぶものです。誰がなぜ殺されたか、という面だけではなく、方法や武器にも言及されているとのことなので、歴史ファン以外の興味も得られそう。
貧農の家に生まれながら、慶應義塾大学に行き、福澤諭吉の娘婿となったという経歴を持つ実業家、福沢桃介の生涯を描いたノンフィクション。紆余曲折を経てたどり着いた水力発電事業では木曽川開発などを手がけた大同電力(のちの関西電力)を創業しています。大きな事業を成し遂げた事業家ではあるものの、本はそれほど出版されていません。どんなイノベーターだったのか、その生涯にご注目を。
地政学ブームはまだ衰えません。地政学的に大事な要素を占めるのが”資源”ですが、気候変動対策等によってエネルギー分野が劇的な変化を遂げています。そういった中で、今後どんな資源戦争が起こっていくのかを予見する1冊。
著者ダニエル・ヤーギンは『石油の世紀』でピュリツァー賞を受賞したエネルギーの権威。(現在は『探求―エネルギーの世紀』というタイトルで流通されています)ESGという言葉が踊りがちないま、世界で何が起きているのか、起きていくのかを知るためにも読んでおくべき本でしょう。
国際宇宙ステーションに滞在中の野口宇宙飛行士が「サバの缶詰」を紹介しました。実はこれは福井県立若狭高等学校で10年以上にわたって開発されたもの。もちろん高校生が10年以上にわたって在籍するわけはありません。この開発には300人以上の生徒が関わっているのだそうです。
2006年に生徒の発言をきっかけにはじまったこの挑戦、簡単な道のりではありませんでした。スタートは福井県立小浜水産高等学校、統合により学校名も変っています。そんな開発の裏側を描いたノンフィクション。学校のあり方や、教育ということを考える機会にもなりそうです。
本年度の開高健ノンフィクション賞受賞作。日本の敗戦時の満州開拓団の姿を描いたノンフィクション。取りあげられているのは岐阜県から満州に渡った「黒川開拓団」。現地で生き残るために、未婚の女性をソ連兵に差し出したという事実がありました。仲間のために犠牲になった女性たちの心の傷は記憶とともに封印されます。
被害者が声を上げたことで掘り起こされた衝撃の真実とは。
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コロナ禍の落ち着く気配は見えないものの、出版されてくる本を見ると、メタバースやNFT、近未来のテクノロジーに関するような未来を感じさせるテーマの本が増えています。これから来る時代に備える巣ごもり期間が過ごせそうです。