オリンピックが開幕し、新型コロナウイルスが再度猛威を振るい始めた7月。発売された本を見てみると、スポーツ関連や世界に目を向ける本が多くなっている気がします。また、例年の動向でもありますが、戦争や戦後を考える本も多く出版されました。7月はどんな本が発売されていたのでしょう。先月出た本の売上ランキングから売場を見ていきましょう。
日販オープンネットワークWINから7月発売のタイトルとHONZのレビュー対象となるノンフィクションジャンルのタイトルを抽出しランキングを作成しています。(2021/7/1~2021/7/31の売上)
7月新刊で面白い動きを見せているのが中公新書の『中先代の乱』です。
『●●の乱』は一時大きなブームになりましたが、今回も北条時行の挙兵というあまり馴染みのないテーマを扱ったものとなっています。ところが、出版業界的に見るとは鎌倉時代~室町時代は今最もアツいテーマなのです。
すでにレビューでも話題になっている『室町は今日もハードボイルド:日本中世のアナーキーな世界』の他、少年ジャンプで連載されており7月に初単行本化されたコミック『逃げ上手の若君』も北条時行を扱ったマンガです。
この夏は室町ブームがくるかもしれません!
銘柄名 | 著訳者名 | 出版社 | |
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1 | PHP研究所 | 『決断力』 | 橋下徹 |
2 | KADOKAWA | 『知らないと恥をかく世界の大問題12』 | 池上彰 |
3 | NHK出版 | 『太平洋戦争への道1931-1941』 | 半藤一利 |
4 | 祥伝社 | 『歴史のミカタ』 | 井上章一 |
5 | 文藝春秋 | 『ラストエンペラー習近平』 | エドワ-ド・ルトワ |
6 | フォレスト出版 | 『ケアマネジャーはらはら日記』 | 岸山真理子 |
7 | 産経新聞出版 | 『ゼロコロナという病』 | 藤井聡 |
8 | 徳間書店 | 『目の前に迫り来る大暴落』 | 副島隆彦 |
9 | 飛鳥新社 | 『習近平vs.櫻井よしこ』 | 花田紀凱 |
10 | SBクリエイティブ | 『銀行を淘汰する破壊的企業』 | 山本康正 |
11 | 講談社 | 『変貌する未来』 | ク-リエ・ジャポン |
12 | 幻冬舎 | 『コロナの暗号』 | 村上和雄 |
13 | 集英社 | 『新世界秩序と日本の未来』 | 内田樹 |
14 | KADOKAWA | 『「太平洋の巨鷲」山本五十六』 | 大木毅 |
15 | 二見書房 | 『死る旅』 | 松原タニシ |
16 | 小学館 | 『新型コロナワクチン副作用が出る人、出ない人』 | 近藤誠 |
17 | 新潮社 | 『半歩先を読む思考法』 | 落合陽一 |
18 | 小学館 | 『無理ゲー社会』 | 橘玲 |
19 | 朝日新聞出版 | 『自壊する官邸』 | 朝日新聞取材班 |
20 | 中央公論新社 | 『中先代の乱』 | 鈴木由美 |
他にも気になる新刊がたくさん!7月発売の気になった本を少しご紹介していきます。
オリンピックもそうですが、大きなスポーツイベントがある時期は出版物が売れない。というジンクスがあります。そんな中でよく動くと言われているのが国旗の絵本や世界地図です。多くの国の人が集まる場で、あ、あの国はどこにあるの?国旗の意味は?といった会話が家庭でなされるのでしょう。
この『旗の大図鑑』はもう一歩踏み込んだ、大人も大満足出来る1冊。国旗だけでなく、社会運動の旗や海賊の旗まで様々な旗が解説されています。
こちらも今だからこそ読みたい1冊です。なぜアフリカのアスリートは足が速いのか。というテーマには多くの学者が挑んでいますが、この著者はなかなか異色です。本人もフルマラソンを2時間20分(!)で走るという驚異的なランナーだそうですが、彼はそのランニング王国の秘密に迫るために15ヶ月間にわたってエチオピアのランナー達と一緒にトレーニングをしたのだそうです。自分の夢を実現するために走るランナーたちの姿とそこから見えたこととは!?
夏という季節もあるのか、海をテーマにした本も多く見つかりました。これは海を舞台にした考古学の本。とはいえ、堅苦しさはなく目次を見ても” 第2章 発掘現場には恋とカオスがつきものだ“とか” 第3章 TOEFL「読解1点」でも学者への道は拓ける“など、歴史嫌いでも楽しく読めそう。
夏休みの宿題で、感想文に悩んでいるお子さんにおすすめしてみてもいいかもしれません。好きなことをやることの大事さを考える1冊になりそうです。
こちらも海がテーマです。海賊の歴史と思いきや「グローバル資本主義の誕生」という壮大な副題がついているのに興味をひかれました。国家以上の力を持つに至った東インド会社が機能するためには、海賊の存在を無視することが出来なかったと言います。その中でも最も有名だというヘンリー・エヴリーをターゲットに、彼ら海賊が何を行い、何を残してきたのかを紐解く本。海賊の見方が変わりそうです。
においが記憶を蘇らせるという話がありますが、実際に「嗅覚」は心の謎を解くための大きな鍵になるのだそうです。最先端の科学、そして香りのプロが嗅覚の世界を語り尽くした1冊。鼻の歴史から始まって、嗅覚研究の現在、においはどういう力を持っているのか等々を解き明かしていきます。犬の鼻と比べても、ヒトの鼻もそれほど負けていないという可能性に満ちた器官。これから先の未来にどんな展望が開けているのかにも興味が沸いてきます。
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災害に関しても、疫病に関しても「未曾有」という言葉が多く聞かれるようになりました。まだ誰も体験したことがない世界を生き抜くには、過去を知り自分の頭で考え続ける事が必要でしょう。本はそんな時の助けになるはずです。素敵な1冊との出会いがありますように。