2021年の大相撲三月場所は関脇・照ノ富士の優勝で幕を閉じた。この一年、無観客開催や感染力士の休場など、新型コロナ禍で大相撲は大きな試練にさらされてきた。
だがファンは健在だ。おすもうさんへの愛と行動力は半端ない。「スー女」(相撲好き女子をこう呼ぶ)で名高いライター和田靜香さんとイラストレーター&文筆家の金井真紀さんが意気投合し、多種多様の相撲を国内ばかりか外国にも足を伸ばして、大好きだからこそルーツや現状の問題点まで探りたいとフットワーク軽く訪ね歩いたルポルタージュだ。
世界青少年相撲大会の「白鵬杯」には、国内だけでなく、香港、台湾、アメリカ、タイ、モンゴル、中国、韓国から1200人もの小中学生が国技館に集う。おどおどとした初出場の小学生から次代の角界を担うかもしれない若武者まで、選手の姿が活写される。
女性のおすもうさんも健在だ。「北海道女だけの相撲大会」で最多の優勝数を誇る四股名「おでぶ山」さんが急成長の若手力士「まこデラックス山」と鎬を削る姿に思わず目頭が熱くなる。
スポーツとしての女子高校生相撲には新たな可能性を感じるし、戦後からの基地問題とも無縁ではない独特の沖縄角力の歴史には考えさせられる。社会人相撲が毎回凄い人気だということも本書で初めて知ったことだ。
2000年前から続くという石川県・羽咋市の「唐戸山神事相撲」にはアフター・コロナとなったらぜひ行ってみたいし、韓国のシルムという相撲にはプロの女性力士がいると知って興味が湧いた。
生まれて始めて知った外国人力士は高見山だった。それが今では世界中から日本へ「おすもうさん」を目指してやってくる。スー女とは言えないまでも、おすもうさんを見かけると私はなぜか幸せを感じる。国技館で焼鳥を食べられる日が近いことを信じてページを閉じた。(週刊新潮4月29日号より転載)