国籍や肌の色、病気や障害などに関わらず子どもは幸せになって欲しい。その願いを込めた本を紹介したい。
『「ちがい」がある子とその親の物語』はアメリカなどで活躍するノンフィクション作家アンドリュー・ソロモンが10年をかけて300組以上の親子を取材し、2012年に出版された。日本では三巻に分られ、その一巻目が上梓された。
この巻で取り上げたのはろう(聴覚障がい)、低身長症、ダウン症。彼・彼女らが置かれた状況の歴史的な背景を踏まえつつ、当事者と家族の葛藤を丁寧に聞き取り、掘り下げていく。
かつては一般的でなかった手話通訳も当たり前になり、本作出版後も、遺伝子治療などの分野で医学は目覚ましい進歩を遂げた。社会的な通念や状況は大きく変化したが、それでも「ちがい」がある子とその親の悩みや戸惑いが無くなることはない。第二巻以降にも興味深いテーマが並んでおり、たいへん貴重な記録だと思う。
『こどもホスピスの奇跡』は貧困や災害、医療などを精力的に取材する石井光太が歳月をかけて難病の子どもに寄り添った力作である。著者は寛解した子も亡くなった子も差を付けず、同じ重さでその人生を描いていく。
16年、大阪市の鶴見緑地に「TSURUMIこどもホスピス」がオープンした。ホスピスと言っても終末期のためではなく、難病の子どもたちと家族に対し、本来の語源である「一時的な休憩を与える場」として建設された。
介護や看護のプロたちが見守り、病院以外の世界を知らない子や不治の病を抱えた子とその家族に過ごしてもらう。「こどもホスピス」は、近く横浜にも開設される見通しだ。各地にこの施設ができることを願ってやまない。
いまや外国人労働者抜きではどんな産業も成り立たない。しかしその人らの子どもたちはどうしているのか。
毎日新聞取材班は外国籍の子が多い100自治体を選びアンケートを行った。その結果をまとめたのが『にほんでいきる』だ。
自治体からの回答によると義務教育年齢の外国籍の子どもの約2割が「就学不明」であることがわかった。日本国憲法では義務教育の対象は「国民」であり外国籍は含まない。放置しても法的な問題はないとされてきた。
だが児童虐待で命を落としたり、母親の無理心中に巻き込まれたりという悲劇も浮かび上がる。日本語ができないことで「発達障害」とみなされ、通常学級に通えない例も多かった。
コロナ禍ののち、在留外国人は増加するだろう。同じ日本で幸せに生活するための体制づくりが必要なのだ。(朝日新聞1/27 夕刊「とれたて!この3冊ノンフィクション)