いよいよ2021年がスタートしました。ただ、感染拡大を受けてしばらくは巣ごもりが必要な日々が続きそうです。12月も注目すべきノンフィクション本が多く発売されています。まずは先月出た本の売上ランキングから売場を見ていきましょう。
日販オープンネットワークWINから12月発売のタイトルとHONZのレビュー対象となるノンフィクションジャンルのタイトルを抽出しランキングを作成しています。(2020/12/1~2020/12/31の売上)
コロナウイルスに関する書籍が多くなってきています。その中でも、現時点で読んでおくべき現場からの1冊として話題となっているのが『新型コロナからいのちを守れ』です。
「8割おじさん」と呼ばれることになった西浦さんが未知のウイルスの存在を知ったのは2019年の大晦日のこと。その後、日本での症例確認、そして自らがクラスター対策班として動くようになる日々。新型コロナウイルスとの格闘の裏側と本音がたっぷり語られています。
銘柄名 | 著訳者名 | 出版社 | |
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1 | 『百田尚樹の日本国憲法』 | 百田 尚樹 | 祥伝社 |
2 | 『ゴーマニズム宣言SPECIAL コロナ論』 | 小林 よしのり | 扶桑社 |
3 | 『脳寿命を延ばす 認知症にならない18の方法』 | 新井 平伊 | 文藝春秋 |
4 | 『日本の論点 2021~22』 | 大前 研一 | プレジデント社 |
5 | 『オードリー・タンデジタルとAIの未来を語る』 | オ-ドリ-・タン | プレジデント社 |
6 | 『ゲンロン戦記-「知の観客」をつくる』 | 東 浩紀 | 中央公論新社 |
7 | 『歴史を活かす力 人生に役立つ80のQ&A』 | 出口 治明 | 文藝春秋 |
8 | 『いまこそ「社会主義」 混迷する世界を読み解く補助線』 | 池上 彰 | 朝日新聞出版 |
9 | 『ビジネスの未来 エコノミーにヒューマニティを取り戻す』 | 山口 周 | プレジデント社 |
10 | 『菅政権と米中危機 「大中華圏」と「日米豪印同盟」のはざまで』 | 手嶋 龍一 | 中央公論新社 |
11 | 『誰もが人を動かせる! あなたの人生を変えるリーダーシップ革命』 | 森岡 毅 | 日経BP |
12 | 『地形と地理でわかる古代史の謎』 | 千田 稔 | 宝島社 |
13 | 『理論疫学者・西浦博の挑戦 新型コロナからいのちを守れ!』 | 西浦 博 | 中央公論新社 |
14 | 『世界哲学史 別巻』 | 伊藤 邦武 | 筑摩書房 |
15 | 『証言 羽生世代』 | 大川 慎太郎 | 講談社 |
16 | 『源氏将軍断絶 なぜ頼朝の血は三代で途絶えたか』 | 坂井 孝一 | PHP研究所 |
17 | 『エマニュエル・トッドの思考地図』 | エマニュエル・トッド | 筑摩書房 |
18 | 『これからの哲学入門 未来を捨てて生きよ』 | 岸見 一郎 | 幻冬舎 |
19 | 『半グレ―反社会勢力の実像―』 | NHKスペシャル取材班 | 新潮社 |
20 | 『新型コロナの科学-パンデミック、そして共生の未来へ』 | 黒木 登志夫 | 中央公論新社 |
ランクインしていない中にも興味深い本は盛り沢山。ここからは12月発売の本から注目タイトルを紹介していきます。
犯罪者は恐ろしいほどの進化の早さを見せます。このノンフィクションの主人公はポール・カルダー・ルルーという人物。国際的な犯罪組織の黒幕といわれている人だそうです。ルルーはサイバー技術の天才で、犯罪組織界のイーロン・マスクとまで呼ばれています。成功するベンチャー経営者が持つべき素質を全て有しながら、ルルーはその技術を犯罪に使いました。まさに犯罪界のGAFA。凶悪犯罪に最新技術が取り入れられて進化していく様、そしてそれを追いかける当局。その熱い戦いを描いた気になるノンフィクションです。
「気体」と人類の歴史を描いた作品。「空気のような」はいつでもそこにあることが当たり前の様子として使われる言葉ですが、実際にはこの空気にも多くの発見と発明の歴史がありました。「空気」の研究からは、人を幸せにするものも不幸にするものも様々なものが産み出されています。人間はどう大気を手なずけてきたのか、いまだわかっていない空気の謎はあるのか。日常の見方が変わる1冊。
生理に着目したちょっと変わった視点での女性史です。「血の穢れ」は太古の昔から忌み嫌われるものとなっていました。そして近代になっても、生理は女性を猟奇事件に走らせたり、精神疾患を起こす原因となったりしている…と、まことしやかに信じられていたのだそうです。
果たしてその言葉にはどんな根拠があったのか、歴史的資料をひもとき考える意欲的な研究書です。
はやぶさ2の帰還は大きな話題となりました。これからも各国、各プレイヤーの努力により大きな宇宙イベントが続きそうです。今やベンチャー経営者がこぞって宇宙を目指す時代となりました。そもそも宇宙探索の必要はどこにあるのでしょう。時代によっても求められている事は違いますが、目的もどんどん広がっています。
表題となっている、かつて2つの月があったという話題にとどまらず、太陽系や最新の宇宙技術をも紹介している宇宙読み物。
新型コロナウイルスに関連した倒産に歯止めがかかりません。中でも個人商店は苦しい戦いを強いられています。『さいごの色街 飛田』を執筆し話題を呼んだ著者が、個人で商売を続ける店を訪ね歩き、そこにある歴史やドラマを描いたルポルタージュ。お店を見ることで、その街の歴史も見えてきます。
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ここ数年、出版不況という言葉が当たり前になっていましたが、コロナ禍や『鬼滅の刃』の影響もあり、2020年は久しぶりに業界的には「好調」という年になりました。しかし本当の勝負はここからです。書店店頭はこれからも面白い本が続々並ぶ予定です。今年もいい本との出会いがありますように!