『週刊文春』3月26日号。森友問題で自殺した職員の手記はコロナ渦で揺れる市民の心を大きく揺さぶるものでした。大きな話題を呼んだこの1冊の週刊誌は発売2日目で「完売」となっています。
この『週刊文春』はどんな方に読まれたのでしょう。
そもそも『週刊文春』の読者はどういった層なのでしょうか?2020年1月以降の『週刊文春』読者を合算したものがこちらのグラフになります。週刊誌なのでコンビニなどでも多く販売されていると思いますが、あくまで書店店頭でのデータとなります。
読者の男女比率は男性が47%程度。女性読者が半数以上を占めています。年代的には70代がダントツで続いて60代というのがいつもの『週刊文春』読者です。
では3月26日号の読者を見てみましょう。
グラフと見ただけではそれほど大きな読者層の動きは見えませんが、この号については、男性読者率が53.4%になり、男女の逆転が発生しています。
ネットなどでも大きく取り上げられたことで若年層の動きがあるのではと予想していましたが、伸びたのは60代以上の層でした。平均年齢を見ると、他の号の読者の平均年齢が66.7才なのに対して、該当号は67.2才と若干の上昇傾向も見られました。
一方で、この号を完売につなげたのは、新たな読者であることは間違いなさそうです。前号の購入者と該当号の購入者を比較してみたところ、64%は前号の購入履歴のない読者でした。前号を購入しなかった新規読者についても70代男性読者が突出した伸びを見せていました。
では『週刊文春』読者は3月にどんなものを併読していたのでしょうか。
銘柄名 | 出版社 | |
---|---|---|
1 | 『週刊文春』 | 文藝春秋 |
2 | 『週刊新潮』 | 新潮社 |
3 | 『週刊現代』 | 講談社 |
4 | 『文藝春秋』 | 文藝春秋 |
5 | 『週刊朝日』 | 朝日新聞出版 |
6 | 『女性セブン』 | 小学館 |
7 | 『週刊ポスト』 | 小学館 |
8 | 『女性自身』 | 光文社 |
9 | 『サンデー毎日』 | 毎日新聞出版 |
10 | 『ビッグCオリジナル』 | 小学館 |
見事に週刊誌が上位を占めました。複数の号があるので、もっとも売れた号で順位付けしています。
定期的に週刊文春を購入する人が多いため、トップは『週刊文春』の他の号。30%程度の方は前号を購入しています。発売日が同じということもあり、『週刊新潮』の併読率も高くなっています、26%程度が文春・新潮をあわせて購入していることがここから見えてきました。
週刊誌については市場縮小が叫ばれ続けていますが、書店店頭で定期的に購入しているリピーターはまだまだ多くいらっしゃいます。
他にはどんな本が読まれているのでしょうか。気になったタイトルをいくつかご紹介。
古い本にはなりますが、今回のスクープ記事が掲載される理由のひとつにもなった本が改めて脚光を浴びています。森友問題を振り返る『国策不捜査』や、桜を見る会を追う記者たちの奮闘『汚れた桜』などもよく読まれています。
予約ランキングの記事中でも紹介した『地球に住めなくなる日』は、発売と同時に大きな売上を見せています。
新型コロナウイルスの騒ぎの中であまり話題になっていませんが、地球の気候崩壊は着々と進んでいるとも言われています。人と物の動きが停滞し、静かに過ごす事が推奨されている今だからこそ、地球の未来についてもじっくり考えて行動を変えていく契機がつくれるのかもしれません。
最近の新潮新書はインパクトのあるオビで推してきます。女性ライターが書いているので「あれ?」とひっかかった本ですが、なんとこの女性自身が元トラックドライバーだそう。
物流危機が叫ばれて久しいものの、トラックドライバーの当事者たちの声というのはなかなか表に出てきていません。日本の物流という大動脈を支えているトラックドライバーは何を思い、何を課題として日々を過ごしているのか。知ることで自分たちの行動も変わってくるのかもしれません。
著者の既刊『独ソ戦』はベストセラーとなり、新書大賞という賞も受賞した話題作でした。著者最新刊は第二次世界大戦を席捲し、欧州を征服する貢献をしたグデーリアンという将軍の評伝です。
ドイツ装甲集団を率いた将軍として有名なのだそうですが、日本ではこの研究は遅れており未だに事実と異なった見られ方をしている部分も多いそう。この伝説の真実の姿を最新学説から説き明かします。
VXによる暗殺劇は映像を通じて大きな衝撃を与えました。なぜ彼は殺されなければならなかったのか、実行犯の裏には何があったのか、まだ多くのことが明らかになっていません。実行犯の家族から、現地警察、友人などを2年半にわたり取材し、この暗殺劇の真実をあぶり出した執念の1冊
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『週刊文春』3月26日号は、次号が発売になった今はネット上で記事全文が無料公開されています。週刊誌という形で年配層に届き、ネットを通じて若年層にも広く届いているはずです。
週刊誌の販売期間は長くはありません、でもこの1冊に書かれていたことはいつまでも忘れてはならない事だと思うのです。人との距離を保ち、静かに過ごす事が求められている今、じっくり考えてみませんか。