本書の3年前に出版された同じ作家の『翻訳できない世界のことば』は本当にステキな大人の絵本でした。世界中の言語から、その言語にしかない言葉を選び、その意味とイメージに合わせた絵が添えられているのです。たとえば
「PORONKUSEMA」 フィンランド語で「トナカイが休憩なしで、疲れずに移動できる距離」
「IKTSUARPOK」 イヌイット語で「だれか来ているのではないかと期待して、何度も何度も外に出て見てみること」
「CONTISUELTO」 カリブ・スペイン語で「シャツの裾を、絶対にズボンの中に入れようとしない男の人」
「SAMAR」 アラビア語で「日が暮れたあと遅くまで夜更しして、友達と倒しく過ごすこと」
「TIAM」 ペルシャ語で「はじめてその人に出会ったときの、自分の目の輝き」
アラビア語やペルシャ語にじつは美しい言葉があることを知って、彼らに対する見方が変わってしまいます。各地の言語や文化を知るというよりも「地球と人間」を楽しむというイメージでしょうか。発売から3年経ってもアマゾンで1400位台。10万部突破のベストセラーなんです。これからも売れ続けるでしょう。日本語からは「KOMOREBI」などが選ばれてます。
さて『ことばにできない宇宙のふしぎ』は言葉から科学にモチーフを変えた新作です。いわば「地球と人間」から「宇宙と人間」に視線を広げたのです。
この出来が素晴らしい!宇宙、光、元素、DNA、ミトコンドリアなどの基礎科学の言葉と概念を、美しい絵とともに短い文章で紹介しているのですが、簡単な言葉を使っているのに、じつは奥が深いのです。
たとえば「光度」。光の強さの説明ですが、話はどんどん進み、最後には銀河中心にあるブラックホールとクエイサーの説明で終わります。文章はわずか2ページ。「鳩がビーチチェアに座って宇宙をみあげている絵」が添えられてます。
たとえば「月」。月と地球が互いに手を出して抱き合っている絵の隣には、たった1ページの文章が書かれています。遠心力と重力が釣り合うことで月が公転していることが上手に説明されているのですが、驚くのはその先。重力とその効果について時空が歪んでいるからであることを説明してしまうのです。そのステキな文章を引用してみましょう。
地球は月よりも大きいので、月に影響を与えるほど大きな時空の歪みを生み、月を支配し地球のまわりを回るように”命じて”いるのです。
でも、月はそんなことを気にしないでしょう。なにしろ、地球から目をそらすなんてことが、月にはできないのですから。
ね、ステキでしょ。これで1800円。『翻訳できない世界のことば」と合わせて3400円。絶対のお買い得。この2冊を携えて旅にでてみましょう。
なんで急に「ですます体」になったかって?『翻訳できない世界のことば』を読み直して、すっかり優しい気持ちになってしまったんです。うふふふふ♡