今年、2019年はレオナルド・ダ・ヴィンチの没後500年に当たる年だそうです。天才と言われる数々の仕事、謎の多い姿。科学が進化すればするほど、彼の残した業績が再評価される機会は増えています。謎の多い天才の生涯を伝記として記したのが、ウォルター・アイザックソン。世界的ベストセラーとなった『スティーブ・ジョブズ』の著者としても有名です。
3月末に発売されて以降、書評で取り上げ売れ続けているこちら『レオナルド・ダ・ヴィンチ』が今回のテーマです。
レオナルド・ダ・ヴィンチはそもそも理系、文系、芸術など、様々な分野に対して天才さを発揮した人物です。昨今重要視されているSTEMを体現しているといっても過言ではありません。そんな天才の伝記、どういった方が興味を持って手に取っているのでしょう?まずは読者の年齢層から見ていきます。『レオナルド・ダ・ヴィンチ(上)』を購入した層は下記のとおり。
男性が読者の75%程度を占め、50代・60代の男性がコアな読者層となっています。比較的高額な本ですが、10代・20代の読者の姿も見られました。
この読者が過去2年以内に購入したものランキングがこちら。
銘柄名 | 著訳者名 | 出版社 | |
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1 | 『 レオナルド・ダ・ヴィンチ[下]』 | ウォルター・アイザックソン | 文藝春秋 |
2 | 『オリジン[下]』 | ダン・ブラウン | KADOKAWA |
3 | 『オリジン[上]』 | ダン・ブラウン | KADOKAWA |
4 | 『ギリシア人の物語[3]』 | 塩野七生 | 新潮社 |
5 | 『FACTFULNESS』 | ハンス・ロスリング | 日経BP社 |
5 | 『漫画君たちはどう生きるか』 | 吉野源三郎 | マガジンハウス |
7 | 『ホモ・デウス[上]』 | ユヴァル・ノア・ハラリ | 河出書房新社 |
8 | 『日本史の内幕 』 | 磯田道史 | 中央公論新社 |
9 | 『ホモ・デウス[下]』 | ユヴァル・ノア・ハラリ | 河出書房新社 |
10 | 『日本国紀』 | 百田尚樹 | 幻冬舎 |
フィクションとノンフィクションが入り交じるリストになりました。人気が集中した本には比較的重厚な本が多く、大物の翻訳本や、上下巻の長大な小説などが目立ちます。ジャンルとしては歴史、ミステリなどが良く読まれているようです。
『ギリシア人の物語』『ホモ・デウス』など、年末年始等の長い休みにじっくり腰を据えて読まれる本が多くラインナップされていることから、今年の年末年始に読む本としてもお薦めできる本になりそうです。ま、ちょっと気の早すぎる話ですけれど。
ダン・ブラウンの『オリジン』が上位に来たのも興味深い事例でした。一番の理由はほぼ同時期に発売になった、ということなのでしょうが、ダン・ブラウンといえば『ダ・ヴィンチ・コード』。その流れから、ダ・ヴィンチの謎に興味を持った方もいるのではないでしょうか?
それでは、『レオナルド・ダ・ヴィンチ』の読者の併読本から気になる本をいくつか紹介していきます。
直木賞候補にもなった原田マハの美術小説。日本に本格的な西洋美術館を作ろうと奔走した松方幸次郎の人生を描いています。本人の念願で2019年の国立西洋美術館の60周年にあわせて発売されたという想いのこもった一冊になっています。「松方コレクション」をはじめ登場人物に史実に即した話も多いため、ノンフィクションファンにもお薦め。国立西洋美術館に足を運びたくなるはずです。
本文批評という学問があるそうです。現存する写本から、元来の形を探ろうとする学問ですが、この本がテーマにしているのが「聖書」。世界中で最も読まれている本とされる聖書にも無数の書き換えがされてきた。とこの本は教えてくれています。その書き換えは意図的であったり偶発的であったり様々だそうですが、写本の照らし合わせや解読で聖書の「もとのかたち」を探っていきます。電子書籍隆盛の世で、紙に定着させアーカイブすることの意味を考えてみたくなる1冊。
ちょうど1年前、1922年~1923年のあいだにアインシュタインが世界旅行をした際の旅行記が発見されたというニュースが報じられていました。しかし、そこには人種差別的な記述もある、などといった気になる話も…。特に中国に関する記述は極めて差別的なものだというのは大きな批判も呼んでいます。日本については比較的好意的な記述が目立つそうですが、公表の意図がなかっただけに、アインシュタインが何をどう感じたかを素直になぞれる作品になっているとも言えそうです。
こちらはパンデミックを題材にした小説。ダン・ブラウンが扱ったテーマとの類似性からか、多くの読者が手に取っています。表題になっている「サリエル」は小説に出てくる新型ウイルスの名前です。このウイルスは突然発生し、離島の住民を全員死亡させるという大きな被害をもたらします。いったい誰が作ったウイルスなのか?テロなのか?本州に拡大していくなか、パンデミックは回避出来るのか?近未来を思い出させる注目の小説です。
今の時代に残っている歴史はいわば「勝者の歴史」。都合が悪い真実は覆い隠されているという事も多くあると言われています。この歴史の謎に、最新の生命科学から迫るというのがこの本。歴史や謎に興味がある人、生命科学に興味がある人どちらも楽しめる1冊になっています。
ツタンカーメンの母親が誰だったのか、あの人の死因はなんだったのか。こう見ていくと、まだまだ「歴史の新発見」は出てくるのかもしれません。
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誰もが知る有名人になると、見られることを意図していなかった手記もたやすく世にさらされてしまう、というのはちょっと気の毒な気もしますが、そのおかげで、我々は天才「レオナルド・ダ・ヴィンチ」の思考や苦労に触れることが出来るのだとも言えます。
活字離れという言葉に流されてしまいがちですが、上下巻のこれだけ重厚な作品をこれだけ多くの方が手に取っていて、文学や芸術に興味を持っているということも嬉しく感じました。
今年を代表するノンフィクションになるだろうという評価の声も多いこの『レオナルド・ダ・ヴィンチ』。じっくり読んでみたい作品です。