ポモドーロ・テクニックをご存じだろうか。生産性をあげるための必殺技である。なんら難しいものではない。25分を一単位にして仕事を区切る。ただし、その25分の間は、これをやると決めたテーマに集中する。電話に出たり、メールをチェックしたり、ネットで遊んだり、といったことは絶対にしない。そして5分休憩。それだけだ。(詳しくはここを)
そんな方法で生産性があがるのか、と疑われるかもしれない。しかし、絶対にやってみる価値があると断言できる。2年ほど前からこの方法で仕事をするようになり、驚くほど生産性があがった実経験からいうのだから間違いない。その解説書がこの本だ。
ポモドーロとは、トマトを意味するイタリア語だ。どうしてそんな名前が使われているかというと、ポモドーロ・テクニックの開発者でこの本の著者でもあるフランチェスコ・シリロが、「課題に集中して特定の時間内に目標を達成するために」最初に使ったのが、ゼンマイ式のトマト型タイマーだったからである。
ネットで『ポモドーロ・テクニック』を検索すると、結構な数のサイトがひっかかってくる。しかし、よく知られているかというと、とてもそんな気はしない。自分で生産性の向上を確信してからは、周囲にポモドーロ・テクニックを勧めつづける伝道師みたいになっているのだが、やっている人はおろか、知っている人すらいない。
ポモドーロ・テクニック用のアプリもたくさんある。使ってはみたが、やはりトマト型のキッチンタイマーがいい。慣れてくると、グイッと回したとたんにやる気スイッチが入るのがわかる。月曜の朝いちばんや、なんとなくやる気のしない日など、特に効果てきめんだ。最初のうちはタイマーのチッチッチッという音が気になるかもしれないが、集中したらそんなもの聞こえなくなる。そうして、一日の仕事が早く終わるようになっていく。冗談じゃなく、ポモドーロ・テクニックさまさまだと思っている。
だから、この本が出ると聞いて飛びついた。方法はシンプルなので、きっとその成功例が書いてあるのだろうと思っていた。しかし、ちがった。うまくいくことはすでに前提になっている。ネット情報には書かれていない、これまで知らないことがたくさん書いてあった。だから紹介してみたくなった。
25分を絶対的な基本単位=ポモドーロとして仕事をする。そして、25分+5分を3~4回続けたら、ゆったりと30分程度の休憩をとる。やっているうちにわかってきた大事なことは、もう少し続けたいと思っても、25分でチ~ンと鳴れば、休憩にはいるべきということ。もったいないような気がするが、そこで区切った方が、次のポモドーロの効率が向上する。一日トータルでの生産性向上を目指すべきなのだ。
もうひとつ大事なことは、休憩時間には、ポモドーロでおこなう仕事のことは考えずにできるだけリラックスすること。経験からなんとなくそうだろうと思っていたこれら二つのことをこの本で確認できて、ちょっとうれしかった。
「生成」(≒仕事の遅れ感)に関する不安の緩和
中断を減らすことによる集中力の向上
意志決定に対する意識の向上
動機を高めて維持すること
目標達成への意志を強めること
質・量の両面において見通す力を高めること
仕事や勉強のプロセスの改善
複雑な状況の中で粘り強くなること
ポモドーロ・テクニックによって可能になるリストを見て、いまだに初心者レベルであることを自覚した。これまでにできているのは、せいぜいこのリストのうち半分、仕事の能率をあげることにしか目がいっていなかった。
毎日、どんな内容を何ポモドーロしたかは記録していた。ただそれだけだった。それだと、生産性は向上するが、意志決定や動機づけ、プロセスの改善などにはつながらない。この本では、そういった大きな目標達成のための方法論が書かれている。というよりも、メインはそのための方法論だ。
かといって、ややこしいものではない。シートを作って、一日のポモドーロの計画や、実際にやってみた結果との比較を手書きで記入するだけ。そういったフィードバックを繰り返すうちに、さまざまな能力が向上するというのだ。これについては、まだ始めたところだが、なんとなくよさげである。
集中力という面では、絶対にオススメする。いくつかの仕事を並行してやるマルチタスキングは、何を見ても効率が悪いと書いてある。実際、ポモドーロ・テクニックを始めてそのことを実感した。時間の配分ではなくて、集中力の配分が問題なのである。
一旦、他の用事にちょっかいを出すと、集中力がその方向に向いてしまい、元の仕事に戻ってきにくくなる。自分はそんなことはない、と思う人には、ぜひ一度、25分間集中してひとつのことをやってもらいたい。きっとそのことに気づくはずだ。
一日の基本計画は8ポモドーロとされている。たった8である。25分×8=200分、3時間20分でしかない。そんなにちょろいのかと思われるかもしれない。しかし、やってみればわかる。慣れるまではとてもそんなにできない。そして、いかに仕事に集中できていなかったかを反省することになる。ちなみに、私のレコードは一日13ポモドーロで、終わった時は頭が朦朧とした。
日本人は生産性が低いといわれる。イタリア人よりも低いと聞くと、ちょっとびっくりしてしまう。この本の著者であるシリロ氏はイタリア人だ。もしかすると、みんなといっぱい遊ぶために、この効率的な方法論を啓蒙しているのかもしれない。
仕事によっては使えない人もいるだろう。すべての人にポモドーロ・テクニックが有効かと言われると、それもわからない。しかし、一度試して決して損はない。タイマーなど安いものだ。それさえもったいないのなら、スマホのアプリでいい。人生の長さは限られている。仕事の時間を圧縮して遊びにまわすべきだ。もっと早くからポモドーロ・テクニックを始めておけばよかったと後悔している。
ポモドーロ・テクニックの次は自己肯定感を身につけたらどうでしょう。それで盤石!