今年に入って、新書売り場の調子が絶好調です。理由はなんといっても樹木希林の『一切なりゆき』の大ブレイク。樹木希林関連は新刊の発売も続々予定されており、さらにブームは盛り上がっていきそう。
今回注目したいのが同じく新書としてとても売れている、『妻のトリセツ』。妻の~と、あるので夫の方の購入率が高いとは思いますが、どういった年代の方が購入しているのか気になります。実際の読者クラスタを見てみましょう。
男女比率は6:4で男性読者優勢。もっと男性多めの想像をしていましたが、なんとこんなにも「妻」の方が多かったとは!年代別には50代・60代が男女とも他世代を圧倒しました。1歳刻みで細かく見ると63歳読者が最多、53歳〜65歳の読者が一つの山を形成しています。子育てが一段落し、夫婦二人になった時に相手をどう見ればいいのか、どう見られているのかに悩む夫婦像が見えてきます。
そもそも、その世代の方々はどんなものを読んでいるのでしょう?気になったので、53歳〜65歳読者が2月に読んだものランキングを作ってみました。
銘柄名 | 著訳者名 | 出版社 | |
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1 | 『一切なりゆき』 | 樹木希林 | 文藝春秋 |
2 | 『あきない世傳金と銀[六]』 | 髙田郁 | 角川春樹事務所 |
3 | 『鼠草紙』 | 佐伯泰英 | 文藝春秋 |
4 | 『文藝春秋 』 | 文藝春秋 | |
5 | 『はじめてのレザークラフト 』 | アシェット・コレクション | |
6 | 『少年ジャンプ 』 | 集英社 | |
7 | 『ラジオ英会話』 | NHK出版 | |
8 | 『プロ野球全選手カラー写真名鑑号』 | ベースボールマガジン | |
9 | 『ハイキュー!![36]』 | 古舘春一 | 集英社 |
10 | 『週刊文春 』 | 文藝春秋 | |
11 | 『樹木希林120の遺言』 | 樹木希林 | 宝島社 |
12 | 『eclat(エクラ) 』 | 集英社 | |
13 | 『七つの会議』 | 池井戸潤 | 集英社 |
14 | 『週刊現代』 | 講談社 | |
15 | 『医者が考案した「長生きみそ汁」』 | 小林弘幸 | アスコム |
16 | 『週刊ポスト』 | 小学館 | |
17 | 『ビッグコミックオリジナル』 | 小学館 | |
18 | 『女性セブン 』 | 小学館 | |
19 | 『女性自身』 | 光文社 | |
20 | 『MIX[14]』 | あだち充 | 小学館 |
いろいろ思ったことはありましたが、コメントは控えます。
気をとりなおし、『妻のトリセツ』購入者の併読本をみていきます。
『妻のトリセツ』購入者が2018年10月以降に購入したもの上位10タイトルがこちら。
銘柄名 | 著訳者名 | 出版社 | |
---|---|---|---|
1 | 『一切なりゆき』 | 樹木希林 | 文藝春秋 |
2 | 『日本が売られる』 | 堤未果 | 幻冬舎 |
3 | 『日本国紀』 | 百田尚樹 | 幻冬舎 |
4 | 『もっと言ってはいけない』 | 橘玲 | 新潮社 |
5 | 『払ってはいけない』 | 荻原博子 | 新潮社 |
6 | 『国家と教養』 | 藤原正彦 | 新潮社 |
7 | 『医者の本音』 | 中山祐次郎 | SBクリエイティブ |
8 | 『すぐ死ぬんだから』 | 内館牧子 | 講談社 |
9 | 『日日是好日』 | 森下典子 | 新潮社 |
10 | 『知ってはいけない[2]』 | 矢部宏治 | 講談社 |
新書中心にベストセラーが並びました。時期的なものもあって、『一切なりゆき』との併売が多い結果になっています。
それでは、『妻のトリセツ』の読者の併読商品から注目作品を紹介していきましょう。
『妻のトリセツ』以前も、男女の脳や体の違いから生じるギャップは両者にとっての永遠のテーマでした。ということで、似たテーマの本は多く発売されています。新しいものではこれがその一つ。こちらも「妻」が対策の中心ではありますが、職場や社会においても活躍できそうな1冊。『妻と正しくケンカする方法』や『パパのための娘トリセツ』なんていうのも発売中!しかし、トリセツフェアが開けそうな刊行状況ですね。
天皇陛下の譲位を目前にし、関連本の出版が増えてきました。『天皇陛下のプロポーズ』はあの有名なテニスコートでの出会いからプロポーズ、ご成婚までを支えたキューピッド役がこちらの著者です。当時の日記を元にした純愛秘話。皇室への注目度も高くなっており、ビックコミックスの『昭和天皇物語』などもよく動いています。
地政学ブームはじわじわと継続しています。こちらは青山・渋谷・表参道の開発と軍用地というサブタイトルがついているとおり、流行最先端の土地であるこの地域は過去の痕跡が多く残っているのだそう。新国立競技場は幕府の火薬庫だったんですね。
地形と軍事がどう地域社会に影響をあたえ、どうやって山の手は近代に向かったのかを地政学視点で読み解く1冊。
コンパクトシティへの取り組みはどうなったのか?都心部では続々とタワマンや商業施設がオープンするけれど、地元の商店街の閉店は止まらない。マンションの修繕は進められるのか、空き家はどうなる?…と、都市を取り巻く問題は山積しています。日経新聞が各方面への大がかりな調査を行い、それを元に実態と危機を明らかにしました。
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新書はこれまでどちらかというと、年輩の男性読者に多く読まれているものというイメージがありました。しかし、今回の新書ブームは女性読者に支えられている側面が大きいようです。
リカレント教育、生涯学習への熱が高まる中において、新書は学ぶことの入り口を担うのに適したものでもあります。また、新書コーナーの面白さは、様々なジャンルの知識がミックスされているというところ。普段なかなか気づかなかった分野の知識との出会いもあるかもしれません。売れ行き良好書盛りだくさんの新書コーナーにぜひ足を運んでみてください。