今年は暦の関係から年末年始休暇が長かったため、休み明けの現実復帰が難しかった…という方も多いのではないでしょうか。出版市場の1月はちょっと停滞気味ですが、そんな中、ビジネス書売場は活気に満ちているようです。(ということは、多くの人がやる気に満ちてるということか…やる気が出てないの私だけ?)
新刊、ロングセラーがしのぎを削るビジネス書ジャンルに注目の新刊が登場しました。それが『FACTFULNESS』。発売と同時にメディアやSNSで取り上げられ、すでに大ブレイクの兆しを見せています。
『FACTFULUNESS』はすでにHONZでもレビューされ話題となっているので、内容の詳細はそちらに譲りましょう。簡単に説明すると、FACTFULUNESSとは「データや事実(ファクト)に基づいて、世界を読み解く習慣」のこと。世の中を正しく見るために身につけておくべき、習慣、スキルをつけましょう!という本です。ビル・ゲイツやオバマ元大統領も大絶賛したこの本が、統計不正で揺れる日本で今ベストセラーになろうとしているのには何かの縁を感じずにはいられません。
さて、発売から1ヶ月に満たないピカピカの新刊はどんな売行きを見せているのでしょうか?
*オープンネットワークWIN調べ(日別売上推移)
1月の22日頃にはあまりの人気に品切れ店が続出。ようやく重版が店頭に到着し始めています。
全国紙の広告掲載、「Newsモーニングサテライト」での取り上げはあったものの、新聞・テレビといったメディアでの扱いはまだそれほど大きくありません。一方で、ネット上ではTwitterタイムラインで話題になるなど、#FACTFULNESS は大きな盛り上がりを見せています。ちなみに、HONZのレビュー掲載日は1/19でした。ここも大きな山になっているのがわかります。
続いて読者層です。
サンプルデータ数としてはまだまだですが、各世代に満遍なく売れているのが特徴です。特に20代男性がこれだけ高い占有を見せるのはこのジャンルの本としては珍しい例。SNSがブレイクのきっかけとなっている事でこのようなクラスタが作られているのかもしれません。
銘柄名 | 著訳者名 | 出版社 | |
---|---|---|---|
1 | 『AI VS. 教科書が読めない子どもたち 』 | 新井紀子 | 東洋経済新報社 |
2 | 『お金2.0』 | 佐藤航陽 | 幻冬舎 |
3 | 『未来の年表』 | 河合雅司 | 講談社 |
4 | 『医者が教える食事術最強の教科書』 | 牧田善二 | ダイヤモンド社 |
5 | 『SHOE DOG』 | フィル・ナイト | 東洋経済新報社 |
5 | 『日本再興戦略』 | 落合陽一 | 幻冬舎 |
5 | 『学びを結果に変えるアウトプット大全』 | 樺沢紫苑 | サンクチュアリ出版 |
5 | 『未来の年表 [2] 』 | 河合雅司 | 講談社 |
5 | 『ホモ・デウス [上] 』 | ユヴァル・ノア・ハラリ | 河出書房新社 |
10 | 『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか? 』 | 山口周 | 光文社 |
10 | 『the four GAFA』 | スコット・ギャロウェイ | 東洋経済新報社 |
10 | 『LIFE SHIFT』 | リンダ・グラットン | 東洋経済新報社 |
10 | 『 「死」とは何か 』 | シェリー・ケーガン | 文響社 |
ここ最近のビジネス書ベストセラーランキングを出してきたような感がありますが、これらを読んできたビジネスパーソンたちがいち早く飛びついていると言うことでもありますし、こういった本のようにより広く、多くの人に読まれる可能性を感じる併読本ランキングにも見えます。
それでは、この読者が併読している本からいくつか注目本を紹介していきます。
『応仁の乱』以降、日本史ジャンルはニッチなテーマ争いの様を呈しています。中でも、この「縄文時代」はここのところ新刊が続々と発売され注目度急上昇中!歴史の教科書では数ページで記述されてしまうこの縄文時代。実は1万年以上続いたとされていて、これは世界史という視点で見ても特異な例なのだそう。今の我々日本人にも多く受け継がれているという縄文人はどんな生活をし、どんな事を考えていたのか。そんな昔に思いを馳せてみませんか?
↑でニッチな…と書いたそばからなんですが、歴史ものではこういった全体像をつかむための本も人気です。というのも、今年は「大人の学びなおし」が大きなブームになりそう。学校に通う大人も増えてきているようですが、最も身近な生涯学習はなんといっても「読書」。歴史・英語・数学は人気の3ジャンルです。
ある意味、この『FACTFULNESS』の実践版とも言えるかもしれません。デービッド・アトキンソンが、様々な論文やデータから導き出す、人口減少×高齢化×資本主義時代の生き抜き方がじわじわと売れています。あわせて読む方も多数!
映画「ロッキー」の名前の由来にもなったと言われているヘビー級王者の評伝が発売されています。なぜか政治関係の本との併読率が高いのが不思議な点です。どうやってこの地位に上り詰めたのか、興行とは縁の深いマフィアとどういった関係があったのか。これまで出てこなかった事実が浮かび上がってきます。
名前くらいは耳にしたことのある、ヘンリー・キッシンジャー。東西冷戦下で様々な外交交渉をまとめた手腕を認められ、今でも世界の指導者から相談を求められる立場にいるのだそうです。キッシンジャーについては、回顧録から会話録、自伝などなど様々な本がすでに出版されていますが、この本はその「交渉術」を詳しく分析したもの。専門家が徹底分析したキッシンジャーの交渉術を学べば明日から仕事の結果もかわる…かも。
*
『FACTFULNESS』はこれからまだまだ売れていくはずです。読者がどんどん増え、ファクトに満ちた世の中、思考に踏み出したとき、世界の何かが変わるのかもしれません。今回の様々なデータと、SNSでの波及を見て、本の力、読書の力を信じてみたい。そんな気持ちになっています。