年の終わりを待たず一足早く、年間ベストセラーが発表されましたが、今年は大人向けのノンフィクションは上位にランクインするものが少なく苦戦の年となりました。
そんな中、勢いを見せるのがユヴァル・ノア・ハラリの『ホモ・デウス』です。
著者のデビュー作『サピエンス全史』は2016年~2017年の年初に大きな話題になり、歴史・人類学ジャンルの本としては異例のヒットを記録しました。その後、勢いは衰えることなく2017年の年末にも売上が爆発。そして第2弾の発売を迎えました。
どんな売れ方をしたのか『サピエンス全史』と『ホモ・デウス』の週次の売上推移をグラフにまとめてみました。(オープンネットワークWIN調べ:週間売上より)
売上が大きく撥ねているのが著者来日、テレビ出演などのタイミングです。2017年の正月のテレビ出演は動きが大きく出版業界では大きな話題となりました。それ以降その勢いを超えるイメージがあまり持てないでいたのですが、続編発売後の10月中旬以降は点数も増えたことから、シリーズで見るともっとも売れている期間が続いています。
こういった重厚なタイトルは年末年始にかけてよく売れ、よく読まれます。この年末年始も再びのユヴァル・ノア・ハラリブームが期待出来そうです。
では『ホモ・デウス』を読んでいる方はどんな方なのでしょうか?『ホモ・デウス(上)』の発売からの読者を見てみます。(WIN+調べ)
最も手に取っている人の多い世代は50代・60代。7対3で男性読者が多いクラスタとなりました。ノンフィクションジャンルの全体傾向と比べると30代以下の若い世代に支持されているのが一つの特徴と言えます。
続いて、『ホモ・デウス(上)』の購入者が2018年9月以降購入したものを見てみましょう。
併読上位作品は以下のとおり
銘柄名 | 著訳者名 | 出版社 | |
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1 | 『ホモ・デウス[下]』 | ユヴァル・ノア・ハラリ | 河出書房新社 |
3 | 『サピエンス全史[下]』 | ユヴァル・ノア・ハラリ | 河出書房新社 |
3 | 『サピエンス全史[上]』 | ユヴァル・ノア・ハラリ | 河出書房新社 |
4 | 『「死」とは何か』 | シェリー・ケーガン | 文響社 |
5 | 『日本が売られる』 | 堤未果 | 幻冬舎 |
6 | 『日本国紀』 | 百田尚樹 | 幻冬舎 |
7 | 『日本史の論点』 | 中公新書編集部 | 中央公論新社 |
7 | 『昭和の怪物七つの謎』 | 保阪正康 | 講談社 |
9 | 『ビブリア古書堂の事件手帖』 | 三上延 | KADOKAWA |
9 | 『動的平衡[2]』 | 福岡伸一 | 小学館 |
9 | 『the four GAFA 』 | スコット・ギャロウェイ | 東洋経済新報社 |
上位には最近話題の新書やノンフィクションがずらりと顔を揃えました。
流石に『ホモ・デウス(下)』の併読率は高く60%以上が購入済。ほぼ同タイミングで購入した方も多いようです。また、このタイミングでも『サピエンス全史』の購入者も多く、『ホモ・デウス』の発売がきっかけになっていることもよくわかります。
それでは併読本の中から注目タイトルを見ていきます。
今回の併読本にはビジネス系、理系雑誌が目立ちました。『日経サイエンス』『ニュートン』などと一緒に読んでいる方が多かったようです。また、AI系の特集を選んで購入されている方も。
この週刊東洋経済は「データ階層社会」の特集で、ユヴァル・ノア・ハラリのインタビューや『ホモ・デウス』の解説が読める号。一緒に読むことで理解が深められそうです。
宇宙には解明されていない多くの謎が残っていて…という文句は宇宙関連書籍の常套的な売り文句。
そもそもどのくらいの謎が残っているのよ…といつも思っていたのですが、この本のオビを見る限りではわかっている部分は本の1割程度のようですね。しかも目に見えている部分のみ。だからこの本には宇宙の謎解説、というわけではなく、宇宙についてわからないこととわからない理由が書いてあります。親子で一緒に読んでワクワクするのにオススメの1冊
近年始まった歴史ブームはまだまだ収束の気配を見せません。今年の大きな特徴は「新常識」が注目された、ということでしょうか。常識が覆されたとして認知度が高いのは「鎌倉幕府の成立年度」ですが、他にも近年見直された日本史常識がいっぱい。これを一挙総ざらいできる注目新書です。
子どもの宿題や暗記に付き合うためにも、このあたりの知識は入れ替えておかないとなりませんね。
性的な魅力について、その進化の秘密に切り込んだ本。動物行動学の観点から見ていますが、人間だって動物。実は性的な魅力というのは非常に移ろいやすいもので、これまた偶然の産物として生じたものなのだそうです。
これを知ってから動物園に行くと、動物を見る目も変わるかも。
タイトルから内容が想像しづらい本ですが、難病との戦いを描いたものです。この難病というのがすごい!
“食事をするたびに腸に小さな穴が開き、その穴が皮膚表面まで通じてそこから便が漏れるという奇病を患っている。”と、あります。2歳の男の子が患った病気ですが、もうどんな状態なのか理解することもできません。しかも「このままでは10歳まで保たない」と考えられた、というあたりには医師の絶望より現在の医療の凄さの方を感じました。
この難病と対峙した医師たちの苦闘とパーソナルゲノム医療を実現するまでの動きを追った医療ドキュメンタリー。この病気がどうなったのか結果が気になります。
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『ホモ・デウス』が最も売れたのはNHK「おはよう日本」で取り上げられた日でした。人類学という、普段ではなかなか一般の方に手に取られることのない本がこれだけ売れたのは、テレビでのわかりやすい解説があったことが理由です。周辺にはまだまだ興味深い本が盛りだくさん!これらに触れながら今年の年末年始を、私たちの行く末について考えてみる機会にしてはいかがでしょう?