『GAFA』という言葉が、あちこちで聞かれるようになりました。7月末に発売された『the four GAFA』も非常に良く売れており、このワードはめきめきと認知度を上げています。
『GAFA』4企業はどれも日本人にとって生活の一部となりつつある馴染みの深い企業ばかりですが、出版業界に籍を置く者にとってはamazonの存在感は格別です。今回は我らが成毛代表執筆の『amazon』を見ていきたいと思います。まずは売上の推移から。(日販オープンネットワークWIN調べ)
出足で苦戦しているように見えますが、これは市中在庫が枯渇していた事が原因です。このグラフはリアル書店のPOSデータになりますので、ECサイト、特にAmazonではスタートダッシュでランキング上位を獲得しそのまま落ちることなく推移しています。
店頭では重版投入のたびに売上を伸ばしていますが、8/25の日経新聞のランキング掲載が一つの転機になってペースが加速しました。これまでで最も売上が大きくなったのは9/24。日経新聞に広告が出て、プレジデントオンラインなどで記事が掲載されたのが主要因と考えられます。
では、この本を読んでいる人はどんな方でしょうか。Amazonの本をAmazonで買わない人のクラスタと言ってもいいかもしれません。
84%が男性読者、50代男性中心というグラフとなっています。この本自体、ビジネス書コーナーに置かれているケースが多いためビジネス書ユーザー中心に読まれているということではないかと思います。日経新聞で気付き、近くの書店で購入するという読者の姿が見えてきます。
若年層が少ないのは、ECサイトでの購入率の高さの裏返しとも言えそうです。
つづいて、併せて購入している銘柄を見ていきましょう。下記は『amazon』の購入者が直近半年に購入したものTOP10です。
銘柄名 | 著訳者名 | 出版社 | |
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1 | 『未来の年表』 | 河合雅司 | 講談社 |
2 | 『生産性』 | 伊賀泰代 | ダイヤモンド社 |
3 | 『the four GAFA』 | スコット・ギャロウェイ | 東洋経済新報社 |
4 | 『LIFE SHIFT』 | リンダ・グラットン | 東洋経済新報社 |
5 | 『アマゾンが描く2022年の世界』 | 田中道昭 | PHP研究所 |
5 | 『サピエンス全史 [上] 』 | ユヴァル・ノア・ハラリ | 河出書房新社 |
5 | 『AI vs 教科書が読めない子どもたち』 | 新井紀子 | 東洋経済新報社 |
5 | 『教養としてのテクノロジー』 | 伊藤穣一 | NHK出版 |
5 | 『ファイナンス思考』 | 朝倉祐介 | ダイヤモンド社 |
5 | 『僕らが毎日やっている最強の読み方』 | 池上彰 | 東洋経済新報社 |
『未来の年表』『生産性』は複数冊数のまとめ買いがあったことでランキング上位となっていますが、それを除くと発売時期も近い『the four GAFA』がダントツの併売率となりました。ちなみに、併読している雑誌を見てみると『週刊ダイヤモンド』と『週刊東洋経済』がほぼ互角の戦いとなっています。また、『会社四季報』との併読率も高め。
それでは読者の最近の併買商品から注目のタイトルを見ていきましょう。
最近発売されたAmazonもののなかでは併読率が高かったのがこちら。「デス・バイ・アマゾン」とは「アマゾン恐怖銘柄指数」とも言われ、Amazonが伸びることによって影響を受け、業績悪化が見込まれる企業の株価指数を示したものだそう。Amazonの進化は日々とどまることをしらず、影響は広がる一途ですが、一方で対抗する企業のほうも様々な戦略をたて立ち向かっていっています。こういった業界俯瞰も出来る1冊です。
2016年に発売された『中国4.0』に続き、日本の4.0の姿が提言されています。他国からの脅威が高まる中、どうやって国を守っていけば良いか?という戦略が論じられていますが、内容紹介を見てわかるとおり、最優先すべき事が「少子化対策」と書いてありますので、子育てについて考えている世代の方にもオススメしたい作品。
前述した『日本4.0』とあわせて購入されている率の高いのがこちら。昨年あたりから地政学ブームが続いていますが、AI技術の進化にともない、この地政学も大きな影響を受けるのだそうです。とはいえ、タイトルは固めながら内容は最新の世界情勢をユーモアたっぷり、かつちょっとシニカルに読み解いたもの。これからの世界の行く末を考えるために手に取ってみては。
『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』の著者の新刊が登場しました。NewsPicks の「さよなら、おっさん社会」の広告にドキッとした人は多いのでは。ここでいうおっさんは単に年齢性別の事を言うわけではありません。昨今、旧来の行動様式のままの人々が引き起した事件が立て続けに起こっています。この本を最後まで心穏やかに読めるかどうかが、自分の「オッサン化」のバロメーターになるのかもしれません。
黒部ダムに行くと、電力不足との戦い、ダム建設での命がけの工事の模様、経営者の決断…などなどを知ることが出来ます。特に工事の模様は映画『黒部の太陽』でよく知られています。そんな有名な人物であるにもかかわらず、太田垣志郎についての評伝はほとんどありませんでした。北康利による本格評伝。電気の大切さを改めて考えた今だからこそ読んでおきたい作品です。
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ふと気になって、5年前(2013年)9月のビジネス書のランキングと今年9月のビジネス書ランキングを比べてみました。5年前は、稲盛和夫さんの本屋、トヨタ・無印良品などの企業本が上位にランクインし、ディズニーの成功法則など成功者から学ぶといった傾向の強いランキングが形成されていました。
一方で今のビジネス書ランキングは未来予測をする本がとても多くラインナップしてきています。出てくる企業名もGAFAを筆頭に海外の名だたるIT企業が中心、と大きく傾向が変わってきています。ネットニュースを通じ「今起きていること」は簡単に触れられるようになっているからこそ、本ではそこからの考察や未来予測を求めるようになっているのかもしれません。ランキングを見るだけでも社会が大きく動いていることを感じます。
企業としてのAmazonも本の『amazon』も快進撃は続きそうです。Amazonに対峙しなければいけない企業はどうなっていくのか。どうしたら未来は開けるのでしょうか。