今や「紀州のドン・ファン」という言葉がテレビから聞こえてこない日はありませんが、ノンフィクションファン、HONZファン…というか栗下ファンにとってはこの名前は馴染みのあるワードだったのではないでしょうか。栗下直也の「『紀州のドン・ファン』美女4000人に30億円を貢いだ男」というキャッチコピーと一体化してしまったかのようなタイトルがレビューされた日は、思わず手を止めて読みふけってしまったという方も多いはず。
それくらい衝撃的な人生を歩んできたドン・ファンの自伝は5月末に死去が報じられるとともに大きな伸びを見せています。いったいどんな方が買っているのでしょうか?
『紀州のドン・ファン』が発売されたのは2016年の12月のこと。さらに、亡くなる1ヶ月前の2018年4月下旬には『紀州のドン・ファン 野望編』が発売されています。まずはこの売上推移から見ていきましょう。
こちらのデータは『紀州のドン・ファン』『~野望編』の月次の売上部数を示したものです。
2017年11月の売れ行き上昇はテレビ「アメトーーク!」での取り上げの影響と見られます。しかし、6月に入ってからはその時を超える勢いで売れ行きを伸ばしています。
続いて読者層です。『紀州のドン・ファン』『~野望編』いずれかを購入した方のクラスタは以下の通り。
全体では男性読者が、亡くなった事が公表された後の購入者は女性比率が上がっています。ワイドショーやニュースなどでの取り上げが影響していると考えられますが、そうはいっても他の銘柄、人に比べるとその増加幅は低め。ドン・ファンの生き様に興味を持つ方は男性に集中しているようです。
では、この方達はどんな本を併読しているのでしょう?『紀州のドン・ファン』『〜野望篇』両方を購入した方の併読率の高い商品を見てみます。
銘柄名 | 著訳者名 | 出版社 |
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『医者が教える食事術最強の教科書』 | 牧田善二 | ダイヤモンド社 |
『バカ論』 | ビートたけし | 新潮社 |
『東大から刑務所へ』 | 堀江貴文 | 幻冬舎 |
『ダイヤモンド 9/9号』 | ダイヤモンド社 | |
『日本二千六百年史』 | 大川周明 | 毎日ワンズ |
『内臓脂肪を最速で落とす』 | 奥田昌子 | 幻冬舎 |
『会社四季報業界地図 [2018年版]』 | 東洋経済新報社 | 東洋経済新報社 |
『東洋経済』 | 東洋経済新報社 |
一般的に新書読者と親和性が高い雑誌を考えると、月刊「文藝春秋」や週刊文春、週刊新潮といった総合週刊誌が上位に顔を見せますが、このケースでは「ダイヤモンド」と「東洋経済」。さらに健康法や内臓脂肪の落とし方、痩せ方といった本が上位に並びました。
なお、このリストに上がったダイヤモンドの特集は「決算書100本ノック」、週刊東洋経済は「ゼロから分かるビットコイン」でした。何となくお金の匂いがする特集です。
それでは、この読者の併読リストから注目銘柄を紹介していきましょう。
非常に併読率が高かった1冊。元AV女優へのインタビューで時代を振り返るという内容ですが、「あの人はいま」という好奇心だけにとどまらず時代を映し出す作品に。読者はほとんどが男性なのですが、女性読者は60代が多め。なぜなのでしょうか…
出口さんの編纂する戦前の起業家たちの人物紹介。オビに、日本にもジョブズやゲイツがゴロゴロいた!とありますが、確かに今から考えられないようなど派手な稼ぎ方、使い方をしていた起業家たちがいっぱいいたようです。特に稼ぎ方より使い方の方に興味がわきます。女性に桁違いのお金をつぎ込んだ紀州のドン・ファンはこの読者にどう見えているのでしょうか。
今回の併読本はやたら投資やお金関連のタイトルが目立ちます。極めつけがこれ。いったいどんな方がこういう名鑑を買っているんだろう…と思って読者層を見てみると、年代は意外にも幅広く、30代~80代まで網羅していました。6月に買ったものを見ると、読者の2割は『会社四季報』も購入。『会社四季報の達人が教える10倍株・100倍株の探し方』も人気銘柄です。
ベストセラーとなった『地方銀行消滅』を送り出した著者が、今度は信金を対象に加えてその消滅予想と、未来予想を行った注目の新書。合併やむなしの状況の一方、公取によるストップがあるなど一筋縄ではいかなそうな銀行の未来図。4月に発売された『銀行員はどう生きるか』との併読も目立ちます。
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紀州のドン・ファンの死去についての謎は深まるばかり…今後の動向が気になるところですが、本の購入者は『紀州のドン・ファン』の生き様の方により興味をもっています。破天荒な経営者本や株投資の本、日本経済が大きく動くこの時期に気になる本が続々出版されています。ぜひ手に取ってみて億万長者の道を目指してみてはいかがでしょう?