ここ数年、腸に関する話題が増えてきている。山中伸弥教授が司会を務めたNHKスペシャル「人体」では、腸は全身の免疫を司り、万病を撃退すると放送された。いささか誇張しすぎだと思うのだが、興味深い番組だった。
じっさい、コンビニの棚にはビフィズス菌や乳酸菌、食物繊維を含む食品がずらりと並んでいるし、サプリメントも次々と発売されている。花粉症などのアレルギーを抑制し、インフルエンザや肺炎などへの抵抗力を増すと期待されているのだ。
いっぽうで、うつ病や自閉症などの脳の病気も腸に関係しているという研究も報告されはじめた。過食症や肥満傾向も腸の影響を受けているという研究もある。腸脳相関という。
この腸とは実際には腸内細菌と腸の共生的な関係のことだ。本書はこの知られざる腸内細菌だけではなく、人間と共生しているさまざまな細菌についての最新研究をレポートしたものだ。
腸内細菌以外には、出産時に母親の産道から感染する細菌、口腔内細菌、皮膚細菌などがあり、人間は100兆個もの細菌と共生しているらしい。
本書では研究だけでなく、実際に行われている最新治療法も紹介している。糞便移植という治療法だ。健康な人の糞便を肛門や口から摂取するという治療法だ。もちろん加工はされているだろうが、いささか抵抗はあるかもしれない。
この治療法が効果を発揮したのは、アメリカでもっとも流行している院内感染症のひとつだ。強度の下痢を伴うもので、毎年約34万人が感染し、1万4000人が亡くなっているという。この院内感染症を治す最善の方法こそ、他人の糞便を腸内に移植することであり、90%の患者に効き目があったというのだ。
本書は科学本だが、ざっくりと細菌の最新知識を得ることができる読みやすい本だ。
※週刊新潮より転載