年明けに飛び込んできた米国での『Fire and Fury』出版のニュースは、日本の出版業界をも大きく揺さぶりました。本国では大ベストセラー、瞬時に売り切れたというニュースに…「じゃあ日本ではいつ出る?」「どこが出す?」「そもそも売れるのか?」等々、業界関係者の話題は一時期そのテーマで持ちきりでした。
で、結局今ノリに乗っている早川書房が版権を獲得。旬を逃してはなるものか、と総力挙げての翻訳活動が行われたようです。そのスピード感は書店向けの注文書に「「突貫工事」で翻訳作業中と」書いてしまうほど(笑)。そんな努力の甲斐あって、2月末に無事出版されました。
ではこの注目の1冊はどんな方に読まれているのでしょうか?
まず読者層から見ていきます。こちらが発売以降の読者の年代別男女比です。
最も多いのは60代男性、次いで70代男性という順です。女性比率は20%程度ですが、国際政治ジャンルでベストセラーになる本としては標準的な男女比率でしょう。ワイドショー等でも取り上げられた本なのでもう少し女性比率が高くなるかと思っていましたが、それほどでもなかったようです。
続いて併読本を見てみます。この半年以内に購入した併読本上位はこちら
銘柄名 | 著訳者名 | 出版社 | |
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1 | 『日本史の内幕 』 | 磯田道史 | 中央公論新社 |
2 | 『不死身の特攻兵』 | 鴻上尚史 | 講談社 |
3 | 『日の名残り』 | カズオ・イシグロ | 早川書房 |
4 | 『漫画君たちはどう生きるか』 | 吉野源三郎 | マガジンハウス |
5 | 『わたしを離さないで』 | カズオ・イシグロ | 早川書房 |
6 | 『文藝春秋』 | 文藝春秋 | |
7 | 『忘れられた巨人』 | カズオ・イシグロ | 早川書房 |
8 | 『屍人荘の殺人』 | 今村昌弘 | 早川書房 |
9 | 『新・日本の階級社会』 | 橋本健二 | 講談社 |
10 | 『日本二千六百年史』 | 大川周明 | 毎日ワンズ |
ベストセラーの併読本なのでジャンル問わず期間内に話題になった本が並びました。カズオ・イシグロとの併読率の高さは、翻訳物を読む方たちによく手に取っていただいているということからでしょうか?
6位に『文藝春秋』が入っていますが、もう少し読者の姿に迫るために定期雑誌に限定して併読本を抜き出してみましょう。上位10誌がこちら。
定期雑誌に限定した場合 | ||
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1 | 『文藝春秋』 | 文藝春秋 |
2 | 『週刊文春』 | 文藝春秋 |
3 | 『月刊Hanada』 | 飛鳥新社 |
4 | 『SAPIO』 | 小学館 |
5 | 『週刊新潮』 | 新潮社 |
6 | 『マンスリーWiLL』 | ワック |
7 | 『ダイヤモンド』 | ダイヤモンド社 |
8 | 『日経おとなのOFF』 | 日経BPマーケティング |
9 | 『東洋経済』 | 東洋経済新報社 |
10 | 『正論』 | 日本工業新聞社 |
総合週刊誌や国際情報誌の他、経済誌読者にもよく読まれていました。納得のラインナップの中『日経おとなのOFF』が異彩を放っています。
さて、では『炎と怒り』読者の併読本から今後注目したい何冊かを紹介して行きます。
『炎と怒り』読者が最近1ヶ月で読んだもの1位はダン・ブラウンの新作でした。フィクションの読者だけでなくノンフィクションファンにも愛されています。今回も美術館から話がスタートし、ちょっとした世界旅行に行った気分になれる作品です。テーマは人工知能。
先日、オプジーボの薬価の値下げのニュースが出ていましたが、これ以外にも実は日本人が創り出した新薬が続々登場しているそうです。それらの作成者の取材を通じ舞台裏に迫った1冊。研究開発費の規模、それ自体の困難さはなんとなく知っていたものの、これほどまで日本初の薬があるということはそれほど知られていないのでないでしょうか?
トランプ本と対をなしているわけではありませんが、米国の状況と同じくらい日本への政治的、経済的影響が大きいのが北朝鮮情勢。関連本も増えてきました。トランプ本の読者は金正恩にも興味津々。今最も売れているのこちらの他、『金正恩 ――恐怖と不条理の統治構造』 などにも注目が集まっています。
今更ロッキード事件にスクープなんていうものがあるのか。というのが本を見てすぐの感想。総理本人が逮捕され裁かれることとなったロッキード事件に、今また注目が集まっています。もしかしたら今後の政局の行き末も見えてくるのか。注目の1冊です。
春は学校ものが売れる季節ですが、この本、なんたってオビがすごい。「日本経済の裏に三田会あり。」と言い切っています。米国情勢より北朝鮮情勢より三田会なのか…と思いましたが、この購入者は同時期に発売された『会社四季報』も買っていたりします。経済の裏に三田会、あるかもしれません。なお、学校ものでは佐藤優さんの書いた『埼玉県立浦和高校』も良く売れています。
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本国での売れ方と比べると、大ベストセラー!という感じにはなりませんでしたが、それでも国際政治ジャンルのものとしてはよく売れています。ここのところの側近の退任などを見ていると、これからも暴露本はまだまだ出てきそう。世界情勢は相変わらず不透明のままです。ニュースで見ていることの裏側をじっくり勉強するには本が一番。ぜひ書店に足をお運びください。