2017年10月末、ビットコインの時価総額は1000億ドルを突破。スマホなどでビットコインを管理するユーザーは全体として11兆円を超える潜在的な購買力を持っていることになる。
2009年10月にビットコインが法定通貨と交換開始されたときのレートは100ビットコインで9円だった。2011年には英字紙「TIME」がビットコイン特集を組んだ。この時点で1ビットコインは87円に上昇していた。歴史ある雑誌の特集を読んで、ビットコインを1万円ほど買った人がいたとしたら、現在の価値は9千万円ほどになる。
この現象が虚像なのか、法定貨幣を補完する存在になり得るのかは別にして、ビットコインの基盤技術であるブロックチェーンは間違いなく世界を変革していく。ビットコイン現象はブロックチェーン1.0でしかない。
既に全世界の金融界は各国中央銀行を含め、決済・送金、証券決済などでブロックチェーンを利用する準備を始めた。このブロックチェーン2.0の時代は数年以内に確実にやってくる。
次は土地登記、商流管理、医療情報などの非金融分野でも使われるブロックチェーン3.0の時代である。10年以内には各国で実装されはじめるであろう。
ビットコインはオタクたちの投機ごっこだと舐めていると、あっというまにあらゆる業界の構造が変わり、いつのまにか仕事を失う。その破壊力はAIを超えるかもしれないのだ。
『アフター・ビットコイン』はブロックチェーンを知るための最高峰だ。評者としては「2017年ビジネス書ベスト」に推したい。各国の中央銀行がデジタル通貨を発行するまでの動きを体系的に、過不足なく丁寧に説明している。金融マンだけでなく、あらゆるビジネスマンにとって必読書である。
ブロックチェーン2.0の影響を直接受けるのは金融界だ。日本のメガバンクが大規模な人員削減を宣言したことから分かる通り、経営陣は時代の大変化を皮膚で感じている。そのためにも金融とは何かということを、もう一度立ち止まって考える必要があろう。『金融に未来はあるか』はすべての金融マンにとって第2の必読書だ。
ブロックチェーンが優れている理由の一つは枯れた技術を使っているからだ。P2P、公開鍵暗号、ハッシュ関数の3つである。実績ある技術を組み合わせたものであり信頼性は高い。それゆえに各国の中央銀行が本気で取り組んでいるのだ。
その暗号技術とハッシュ関数を解説したのが『暗号技術のすべて』である。内容はいささか技術寄りで、行列式やアルゴリズム図などが容赦なく登場する。内容を書店で確かめてから買っても遅くはない。
ただ経営者ならば今後のシステム部門に数学や物理の出身者が必要だと数分で理解できることだろう。
将来、理系出身ではない金融マンが生き残ることはできるのだろうか。答えはすぐにやってくる。
※日経ビジネスより転載