「雑誌が売れない」と慣用句のように語られていますが、そんな市況の中でも売上が伸びている雑誌があります。例えば、パズル雑誌。POSの売上を見ると、4年連続で100%超えが続く超優良ジャンルとなっています。不況ムードに隠れがちですが、いい話は色々あるのです。
そんな中、9月の売上ランキングを見ていて目にとまった雑誌がありました。下記は9月期の定期雑誌売上ランキング(日販POS店調べ)です。冊数のランキングは週刊誌が上位を占有する傾向にありますが、売上金額ベースで見ると面白いランキングが見えてきます。
RANK | 出版社 | 書名 | 発売日 | 本体価格 |
---|---|---|---|---|
1 | 小学館 | コロコロコミック | 2017.9.15 | 509 |
2 | 東洋経済新報社 | 会社四季報 | 2017.9.15 | 1,907 |
3 | 小学館 | ちゃお | 2017.9.1 | 537 |
4 | 宝島社 | mini | 2017.9.1 | 722 |
5 | 文藝春秋 | 文藝春秋 | 2017.9.8 | 815 |
6 | 角川春樹事務所 | 美人百花 | 2017.9.12 | 704 |
7 | 集英社 | SEVENTEEN | 2017.9.1 | 602 |
8 | 集英社 | 少年ジャンプ | 2017.9.16 | 241 |
9 | 宝島社 | リンネル | 2017.9.20 | 824 |
10 | 扶桑社 | 栗原はるみ haru_mi | 2017.9.1 | 933 |
1位の『コロコロコミック』は想像できた結果にしても、2位に『会社四季報』が入ったのは意外な結果でした。発売日とデータ取得期間の関係などもありますが、こうしてみるとこの存在が光ります。実は順位や売上自体も大幅に伸びていて、ほぼ同時期に発売された昨年の秋号と比較すると150%程度の売上伸張率となっています。雑誌不況を吹き飛ばすいい話、この『会社四季報』について見てみたいと思います。
そもそも株関連書籍・雑誌の売り上げと、株価には相関性があると言われています。そこで『会社四季報』の売上グラフに日経平均(各月の高値)を重ねてみました。(売上は日販POS店調べ)
軸は違いますが、動きは綺麗なまでに一致。あまりに綺麗過ぎるので不安になり、月刊の某マネー誌で同じグラフを作ってみました。
傾向は似た感じです。相場、恐るべし。出版業界人は株価も鑑みた制作・仕入をしないといけませんね。
さて、話を『四季報』に戻します。『会社四季報』の読者はどういった方々なのでしょうか?
読者層はこちら
70%以上が男性読者。そして核となるのが60代以上という状況でした。ちなみにほぼ同時期に発売されている『会社四季報別冊 プロ厳選の500銘柄』の方になると男女比はほぼ変わらないものの、平均年齢が若干下がっています。
続いて、『会社四季報』購入者が10月に購入したものを見てみます。
RANK | 銘柄名 | 出版社 |
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1 | 『文藝春秋』 | 文藝春秋 |
2 | 『週刊ポスト合併号』 | 小学館 |
2 | 『ダイヤモンドZAi』 | ダイヤモンド社 |
4 | 『週刊現代』 | 講談社 |
5 | 『東洋経済』 | 東洋経済新報社 |
6 | 『プロ厳選の500銘柄』 | 東洋経済新報社 |
7 | 『ダイヤモンド』 | ダイヤモンド社 |
10 | 『日経マネー』 | 日経BPマーケティング |
10 | 『エコノミスト』 | 毎日新聞出版 |
10 | 『週刊文春』 | 文藝春秋 |
上位は雑誌、ビジネス誌やマネー誌が並んでいます。書籍ではどんな本が読まれているのでしょう か?会社四季報読者が注目する作品を紹介していきます。
マンガーとはバフェットのパートナー。それも唯一無二とまで言われた方です。バフェットに比べると知名度は今ひとつですが、実のところバフェットの理念はマンガーのアイデアに基づいたものも多いとのこと。タイトルだけ見ると、投資のテクニック集に見えますが、深い含蓄、理念、視点が語られた作品。マンガーを知りたい人にオススメです。
相変わらずの地政学人気が続いています。著者はNATO軍最高司令官を務めた米海軍提督。肩書きだけでもインパクト大ですがまさに七つの海を股にかけてきた軍人だからこそ、説得力が違います。歴史を紐解きつつ、アメリカの今後の海洋戦略までを語るという、気になる1冊。
最近では何か事件を起こすと、瞬く間に過去の事が調べ上げられ、子どもの頃はどうだったかとかなんとか、隠し事も隠しておけない世の中になりました。その中でよく聞かれるのは「昔は神童と言われて…」という一言。あの名門校の卒業生は、首席で卒業した人は、、、、どうなったんだろう。というよくある疑問を解き明かした1冊。シビアな現実なのか、もっともな内容なのか、色々考えたくなる作品です。
AIやIoTが浸透した未来はどうなっているのか、私たちの仕事はどうなっているのか?この問題を考えるときに必ずといって出てくる問いです。ロボットによって代替されてきた単純作業だけでなく、今後はいわゆる専門家分野にもこの影響は及んでくるはずです。たとえば、教育、たとえばコンサル。こういった仕事がどう変化していくのかを分析したのがこちら。投資すべきジャンルが見えてくるかもしれません。
新刊案内を見て「こんなにニッチな世界史の本が出るのか!」と驚愕したのですが、これがまたじわじわと注目されて売れています。最近の中公新書は渋さを競い合っているのでしょうか…。トラクターは穀物大量生産を可能にしたことで世界を変えたのだそうです。確かに、こういう機械を購入する必要がなければJAも成立しなかったかもしれません。ナチスドイツにも注目されていた話など、世界史がぐっと身近になります。これもすごいと思っていたら、次いで『戦争と農業』という新書が発売されていました。これもあわせて読みたい作品です。
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今年は企業ノンフィクションの当たり年、もう少しそういった本が併読本として出てくるかとも思っていたのですが、メインは株のハウツー本、それ以外には歴史物が多めでした。投資という未来予測のためには、過去を知ることも重要ということなのかもしれません。株価好調の今、投資術だけにとどまらず様々な企業や技術の未来について考えてみるのも良いのではないでしょうか。