秋の夜長、読書をするにはいい季節だ。1947年(昭和22)年、「読書の力によって、平和な文化国家を作ろう」と読書週間が作られた。出版社、取次会社、書店、公共図書館、そしてマスコミも参加したこの運動は今年、第71回を迎える。
例年通り今年もまた、10月27日~11月9日まで2週間「本を読もう」というキャンペーンが行われる。だが読書の周辺は明るくない。本が売れない、本が読まれない、どんな本を読んだらいいかわからない、と読書から遠ざかる人が増えているようだ。個人個人にぴったりの本を選んであげるのは難しいが、お気に入りのジャンルの読書ガイド本を紹介してみよう。意外と興味をもってくれるかもしれない。
まずはHONZらしく科学と文化の最先端の本のガイド本。
生物心理学者で東大教授の岡ノ谷一夫が進める90冊は科学好きにはたまらない。第1部「脳に来ことが読めるか」では一般的な科学書を、第2部「AIは小説を読まない」では人間だけに許された小説を読むという行為を楽しませてくれる本を紹介していく。
岡ノ谷一夫はHONZメンバーが大好きな『ハダカデバネズミ』の著者である。ハダカデバネズミの研究は終わり、今はこんなことを始めたらしい。面白そうだ。
続いては歴史を勉強したい人向けのガイドだ。ここ数年の世界史ブームの火付け役、HONZの客員レビュアーでもあるライフネット生命創業者の出口治明が著したのはこちら。
このガイドに紹介されている109冊は世界史だけではない。日本史も美術史も、個人史までも含まれる。将来、何が起きるかという神通力を人間は持っていない以上、歴史や過去の出来事を教材にして想像するしかないのだ。
もう一冊出口治明のガイド本を。読書の楽しみを覚えるのは幼児期である。私も読書好きの両親から、本はふんだんに与えられた。子どもには質のいい児童書を与えたい、というのは親心だろう。本書は出口が選びに選んだ児童書10冊の完全ガイドだ。『はらぺこあおむし』に始まって『西遊記』『アラビアンナイト』『エルマーの冒険』『ナルニア国物語』などなど、内容を知ったうえで親が一読することをお薦めする。
著者の河野通和は元『考える人』の編集長。毎週送られてくるメルマガは最良の読書ガイドであった。本書はその中からの選りすぐり。1『読書を考える』2『言葉を考える』3『仕事を考える』4『家族を考える』5『社会を考える』6『生と死を考える』という6つのパートで良書ばかりを25冊。まずは読書の手掛かりが欲しい、という人にうってつけだ。
世界各国、日本の時代ごとの古典文学を、その道のプロに選んでもらった贅沢な本である。加えて現代に残るエンターテインメントの古典的傑作も網羅している。ちなみに私はノンフィクション部門を担当。
誰もが読んでいるはずの本。それは教科書に載っていたものだ。「そういえば…」と思い出すような古文・漢文を100冊紹介している。珠玉の名文や言い習わされたフレーズをもう一度思い出してみよう。学生の頃につまらなかった漢文が、大人になると身に沁みたりする。
ここ何年も歴史・時代小説が花盛りだ。毎月大量の新刊本が上梓されている。面白そうだし読んでみたいけど、どこから手を付けていいかわからない。そんな人にぴったりである。時代ごと、テーマごとに分かれているが、一番オススメは「この作家はこれを読め!」という最終章。活躍中の時代小説作家が網羅されているので、この本をもって書店に行き冒頭だけでも読んでみるといいかもしれない。
女優でタレントでありエッセイスト、書評家としても評価の高い中江有里。本まわりのエッセイもいいが、後半の読書日記には驚かされる。様々なジャンルを縦横無尽に読みふけり、紹介された100冊はガイド本らしいガイド本だと思う。
最後に紹介するのは病膏肓に嵌った人への古書店・図書館のガイド本。マニアックな古書店は趣味を同じくする人が集い、博物館や美術館に併設された図書館は、一度は行ってみたいところばかり。読書週間ならずとも、本関係の仕事をしている人なら、持っていて損はない一冊である。