子どもの頃、両親の本棚からこっそり取り出して読んだ本にはどうもいい思い出がありません。いい思い出どころかその後の悪夢に繋がった本の代表格が『悪魔の飽食』と『ノストラダムスの大予言』。
『ノストラダムスの大予言』については、200万部を突破する大ベストセラーであり、社会現象をも巻き起こし色々な方面に影響を及ぼしたと言われています。私の身の回りにも「どうせ1999年で世界は終わっちゃうから」って言って宿題やってこなかった人が何人も…みんな今どんな大人になっているんだろう。
これに限らずとも、小中学時代はオカルトが身近なところにありました。休み時間にコックリさんをやってみたり、テレビで見た川口浩探検隊の活躍にツッコミを入れたり、世界の七不思議について考えたり、ユリ・ゲラーの真似して曲げられた給食のスプーンも数知れず…。
ここのところ、そんな苦いような酸っぱいような甘いような幼い頃の感動と興奮を思い出さずにはいられない本が次々と出版されています。『ムー公式 実践・超日常英会話』『世界をまどわせた地図』『コックリさんの父 中岡俊哉のオカルト人生』…どれも結構良い動きをしていて、何かムーブメントの予感がします。世情不安を受けて、オカルトブームが到来しようとしているのでしょうか。
このジャンルを代表する銘柄といえばなんといっても『月刊ムー』でしょう。一大ブランドとなり、ムーの公認ショップも開設されるなど、なんだかやたら盛り上がりを見せています。この雑誌、どんな人たちに読まれているのでしょうか?
『ムー』は定期的な購入者が50~60%程度いらっしゃる固定ファンの多い雑誌です。
今回は、4月発売の5月号~8月発売の9月号までを連続購入したコアなファンの客層を見てみました。
なんと核となっているのは50代、60代。中学生がお小遣いで買っているには無理はあるかなと思っていましたが、ここまで年輩の方々に支持されているとは思いませんでした。『ノストラダムスの大予言』の発売が1973年、その頃10代~20代くらいだった世代です。もしかしたらあの影響は未だ続いているのかも知れないし、世界の不思議に対する知識欲も衰えていないのかも知れません。
さてこの方達はどんな本を読んでいるのでしょう。上記の継続購読者が8月~9月に購入したものからランキングを作成しました。
RANK | 書名 | 著者名 | 出版社 |
---|---|---|---|
1 |
『米政府がひた隠すUFOと異星人の真実 (別冊ムー)』 |
学研プラス | |
2 | 『週刊現代』 | 講談社 | |
3 | 『JAPAN CLASS 〜誰か、ニッポンを止めてくれ〜』 |
ジャパンクラス編集部 | 東邦出版 |
3 | 『週刊ポスト』 | 小学館 | |
5 | 『秘伝』 | ビーエーエージャパン | |
6 | 『ニュートン』 | ニュートンプレス | |
6 | 『ゆほびか』 | マキノ出版 | |
6 | 『anemone(アネモネ)』 | ビオ・マガジン | |
9 | 『少年ジャンプ』 | 集英社 | |
10 | 『銀の匙[14]』 | 荒川 弘 | 小学館 |
10 | 『お金と幸運がどんどん舞い込む!』 | すごい! 神様研究会 |
宝島社 |
10 | 『「あの世」の先輩方が教えてくれたこと』 | 松原 照子 | 東邦出版 |
10 | 『魔百合の恐怖報告』 | 朝日新聞出版 | |
10 | 『ラジオ英会話』 | NHK出版 |
いろいろな方向から突っ込みたくなる併読商品ですが、やはり最も気になるのは『ニュートン』でしょう。
オカルト雑誌の代表格と、科学雑誌の代表格がこれだけ多くの人に併読されているとは…感慨深いデータでありました。
雑誌の併読本だけあって、雑誌率が高かったのも特徴ですが、50代・60代の支持率が高い週刊文春、新潮が上位に出ず、現代・ポストがそろい踏みとなったのも面白いポイントでした。
それでは、『ムー』読者の併読本から注目作品を紹介していきます。全体的に陰謀論ものが多くて、タイトルを見ているだけでくらくらします。世の中いろんな謎がありますね。
ムー読者は秘密が大好き。世界一有名な秘密結社、フリーメイソンの動向にはとても興味をもっているようです。しかもよくよく見ていくと、今年、2017年は近代フリーメイソンの誕生から300年の節目の年なのだとか。(秘密結社なのにその辺が秘密じゃないあたりが面白いなあと思います)この結社が抱える謎をQ&A方式で解き明かします。と、見ていたら『謎多き団体「フリーメイスン」全面協力ブック FACTS ABOUT FREEMASONRY BOOK』というすごい商品が出ているのを発見。DVD付きと…いったいどこまで秘密なのか戸惑いを隠せません。
今売れている新書です。戦後日本にはあるウラの掟があり、最高裁・検察・外務省はその掟に基づいた裏マニュアルをもって動いていると、公文書を解き明かしながら説明していきます。日本の政治の動きを見る目が少し変わってくるかもしれない1冊。
著者はカメラマンの小林紀晴。本人も、御柱祭で有名な長野県で生まれ育ったということで、奇祭に惹かれ全国を旅しています。最近テレビで取り上げられる奇祭も増えていますが、海外にいかなくても国内にもこんな不思議な風習が残っているのか!という驚きがあります。祭りの意味を考えるのも面白いですし、他の地域の祭りについて調べてみるのもいいかもしれません。
『ゆほびか』が併読本にあるだけあって、健康関連の話題への反応は良さそうです。すでにレビューでも取り上げられているこちらも上位に入ってきました。実際に読者層を見ても似た年齢に読まれています。ここからさらに売上を伸ばして行きそうな1冊。
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そもそも『ムー』はノンフィクションなのか。という突っ込みもありそうですが、昔信じられていなかった地動説のように、常識が覆ることもいつかあるかもしれないし(まあ、そろそろ厳しそうなネタも多いけれど)、相変わらず世界の七不思議は七不思議のまま。古代に思いを馳せるのは、恐竜の姿について考えたり、宇宙の果てについて考えたりするのとかわりのないことなのかもしれません。 さまざまな不思議に興味を抱く人の気持ちが、科学発展の基礎になっている事は間違いありません。
フィクションと背中合わせにあるノンフィクションのジャンルとして、少し注目して見ていきたいと思います。