ざんねんないきものとは一生けんめいなのに、
どこかざんねんないきものたちのことである。
世の中にはものすごく不便そうな体を持っている生き物や、どうしてそんな大変そうな生き方をしているの?って思う生き物。またそんな能力を持っていてどうするの?と思ってしまうような生き物が多数存在している。進化というのは一方通行であるがゆえに進化の過程において、かつては必要だったけれど、いまは不必要になってしまった能力や特徴をもっている生き物というのがたくさんいるのだ。たとえば誰もが知っているパンダは、ササの葉ばかりを食べているイメージがあると思う。
しかし、パンダが食べているササにはほとんど栄養がなく消化も悪いそうだ。パンダはクマの仲間なので雑食である。動物園では肉や果物もたべている。だからわざわざ栄養のないササをたべる必要性はないのだ。それなのにササを食べてしまう習性は、過去に他の動物に山を追われ、ササしか生えていないような高山で暮らさざるを得なかったことに起因している。食べる意味が無いのについササを食べてしまうのは、パンダの悲しい性なのである。
このように、なんだか「ざんねん」な感じがするいきものたちの知られざる生態をイラスト入りで紹介しているのがこの本である。冒頭に引用した文のひらき具合からもわかるように、この本は子ども向けにつくられたものだ。しかしこの本を子供だけに読ませておくなんてもったいない!大人が読んでも十分に楽しめる内容なのだ。むしろ大人の方が、自分が知っている生き物にそんな意外な一面があったのか!という驚きがあって楽しめるだろう。また「そんなバカな?」とついついツッコミを入れたくなってしまう話も満載だ。
ただ一つ注意してほしいことがある。この本を電車内など、人が大勢いるところで読むことはやめたほうがいい。読んでいるとどうしても顔がにやけてしまうのだ。周りから変な人だと思われたくない人は、家でこっそりと読むことをオススメする。
では、ここからはパンダ以外で気になった「ざんねんな」いきものたちを紹介していこう。
コアラはユーカリに含まれる猛毒のせいで一日中寝ている
コアラが木にしがみついてぼーっとしているのにはわけがある。コアラの主食であるユーカリの葉には青酸やタンニンが含まれているのだ。これらは殺虫剤に使われるような猛毒で、他に食べる動物はいない。それを食べられるようになったことで、コアラは生存競争に勝ち残ったそうだ。しかし、食べられるようになったとしても毒は毒。解毒には体力が必要なので、エネルギーを節約するためにいつも寝ているのだという。毒だとわかっていても食べざるを得ないって、なんだかコアラがかわいそうになってくる。
雨の日が続くとミユビナマケモノは餓死する
ミユビナマケモノのポリシーはとにかく体力を使わないことだ。食事は1日に木の葉を1枚か2枚食べるだけ。しかもそれを消化するのには数週間かかるらしい。ナマケモノは全てが省エネ構造でできているため、体温調節機能がなく、雨が降り続くと、体温が低下して、胃が動かなくなるのだという。すると満腹であっても、消化ができなくて、餓死することがあるんだとか……。満腹なのに餓死ってそんな残念な死に方があっていいのだろうか?
アライグマは食べ物をあらわない
これはこの本の中で一番衝撃的だった。アライグマは目が悪く、手探りで川の底にいるエモノをさがしているのだという。それを見た人が、食べものを洗っていると勘違いしてアライグマという名前をつけてしまったらしい。こればっかりはアライグマが残念なわけではなく、名前をつけた人が残念なんじゃないだろうか?ただ不思議な事に動物園で飼育されたアライグマは必要ないのに食べ物を水で洗うそうだ。なぜそういう動作をするのかはわかっていないが専門家いわく、暇つぶしでそういう行動をとるらしい。暇つぶしって……。それはそれで意味がわからない。
マンボウの99.99%はおとなになれない
これを見てマンボウに生まれなくてよかったと心底思った。最大級のマンボウは、なんと3億個!も卵をうむそうである。そのうち大人になれるのはたったの2匹!数字で表すと2/300000000つまり、0.00000067% である。99.9999999%は大人になれないのだ。そう考えると、大人のマンボウっていうのは存在自体が奇跡みたいなものなのかもしれない。
このほかにも泳ぐのをやめたら死んでしまうマグロや、眠ると溺れるイルカなど、誰もが知っている生き物の残念な生態が紹介されている。またHONZ読者にはお馴染みのクマムシやハダカデバネズミといった生物の残念な生態も紹介されているので必見だ。
子ども向けの本とあなどるなかれ。気軽に読めて、知的好奇心を満たすことができるお得な本である。またイラストが可愛らしいのでパラパラっと眺めるだけでも癒されることまちがいなしだ。なにより972円というお手頃価格。これだけそろえば間違いなく買いである。
※画像提供:高橋書店
この本を買ったときに目にして気になった本。表紙にインパクトがありすぎ!ジャケ買い推奨!