朝会は静かに続く。久しぶりの早朝ということもあり、みんなまだ半分寝ているようだ。いつもはチャチャを入れたり突っ込んだりの仲野も麻木も湿りがち。人の揚げ足を取ることにかけては、広告マンより才能があると思われる内藤でさえ「なんだか今日は静かだね」とこそこそ囁かれる始末である。
しかし機運は高まってきていた!
「今月読む本」は「まだ読んでないけど面白そう」という精神が基本である。この3冊は、朝会当時まだ発売されていない本。悪名高い収容所の囚人の手記とか、ゲームにおける新しい効用、そしてHONZでもおなじみの翻訳者・青木薫さんの脳科学最前線の本ともなれば興味しんしん。発売日には書店で見てみよう。
ここで小爆発が起こる。いつも「誰も見たことのない本」を用意してくる足立らしく、グラフィック社から出ている紙見本の本が超美しいのだ。紙を使うデザイナーにとって、質感は何より大事。でも一般の人でもなんとなく欲しくなってしまう。すりすりすりすりとみんな触り続けてる。地元の殿様を網羅した国衆ガイド、大好きなJAMSTECの台所など、さすがの選本。
クマムシ博士の堀川はブレない。微少な生き物に対する愛情は山よりも高く、海よりも深い。「えー、ダニなのぉ?」という麻木の抗議にも「いいやつなんです」と弁護。アストロバイオロジーの先駆者が語る命の根源、ドイツにおける原子力に対する考え方の変遷など、さすがに科学者らしい。それにしても、こんなに厚い本を読むのは村上浩くらいかと思っていたのに。
そういえば久保は古代史の本を多く紹介している。意外とロマンチストなのかもしれない。アトランティス大陸やらタイタニックやら海底にはお宝がいっぱいだ。古代ギリシャのイメージを一変させるらしいこの本も魅力的。磁石は最近の工業の発展の中では欠かせないアイテムなのだそうで、日本の技術はすばらしいらしい。
中野京子さんの本はハズレがない。それにしてもよくネタが続くと感心する。外国人が感じる京都の感動は意外なもの。レビューはこちら。来年の大河ドラマの影響で山ほど出ている真田もの。この本を選んだのは甲冑の写真や図がたくさん出ていたからだそうだ。やはりイラストレーターだけのことはある。
今回初登場のアーヤ藍。ドキュメンタリ映画の配給会社の取締役なのだが若い。つい先ごろ中南米を旅行し、いろいろなカルチャーショックを受けたそうだ。この3冊もその影響か、近代マーケッティングの父・コトラーの本はいいよ、と成毛のお墨付き。様々な家族が一緒に住む家に泊めてもらう経験をしたとか。比較宗教学者とイスラム学者と対談も面白そう。
こちらも初の朝会登場、秋元由紀。アメリカの弁護士であり翻訳家でもある。分厚い上下本『沈黙の山嶺 第一次世界大戦とマロリーのエヴェレスト』を読んだ仲野徹が「よくもまあ、あんなに長い本の翻訳を…」と感嘆していた。アメリカにとって1927年というのは平和の象徴のような年だったのだそうだ。旅と本とは相性がいいが、それを研究するってどういうこと?測量史は冒険の宝庫なのだとか。それにしても大学出版会の本をこんなに読んでいる人がいるんだなあ。
信じる者は救われる。しかしそこに莫大な金額が必要なのはおかしい。代替医療に関してはサイモン・シン『代替医療解剖』が思い浮かぶが、様々な訴訟を抱えてしまったらしい。日本郵政が上場した今、次はJAの解体がささやかれる。「技術の使用者である人間の道徳から、人間と機械の相互作用の中にある道徳へ」という分かったようなわからないような本も大学出版会。
この朝会の前日、早朝に内藤順は塩田春香に叩き起こされている。「朝会、みんなどこにいるんでしょう?」という問いに「明日だ…」と不機嫌に答えた内藤。ああ、これは一生言われるなあ、と思っていたところ、最終走者である塩田が紹介した本が大爆発した!2015のN0.1だ!と成毛が叫ぶ。『冒険歌手』の内容を聞くうちに、スクリーンに映し出されたアマゾンの在庫がどんどん減っていく。あまりの凄さにみんなその場で買っているのだ!今朝レビューがアップされた、急げ!この本のインパクトが凄すぎて、あと2冊は何を言ったか覚えていないけど、どちらも面白そうではある。
いやはや、意外な展開であった。朝会から5日にして『冒険歌手』を読み終わったメンバーがすでに5人。『殺人犯はそこにいる』以来のヒットだ。私もどこに紹介しようか、迷っている最中である。
さて、欠席者とおまけ本、そして昨今の出版事情解析は次回のお楽しみ。『冒険歌手』より面白い本は登場するのか。請う、ご期待。