『絶対に見られない 世界の秘宝99』失われた化石

2015年7月17日 印刷向け表示
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『絶対に見られない世界の秘宝99』は、二度と目にすることができなくなった世界の秘宝や財宝をイラストと写真で読み解いた一冊。どのなくしものにもそれぞれにユニークで興味深い物語があり、その核心にはどれにも共通の永遠の謎がある。本日から全3回に渡り、本書の内容の一部を連載形式で紹介していきます。
1:失われた化石 7月17日公開
2:クロムウェルの首 7月19日公開
3:モンテスマの秘宝 7月20日公開

絶対に見られない世界の秘宝99 (NATIONAL GEOGRAPHIC)

作者:ダニエル・スミス 翻訳:小野 智子
出版社:日経ナショナルジオグラフィック社
発売日:2015-07-16
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1800年代半ば、米国は西部開拓時代の幕開けを迎え、後にゴールドラッシュならぬ「ダイナソーラッシュ」と呼ばれる騒動に火がついた。恐竜の化石を発掘しようと人々が殺到したのだ。先史時代の生物の化石が猛烈な勢いで発見され、新種の恐竜が次々と特定されていった。その騒ぎの中心人物がマーシュとコープの二人だ。 彼らライバル同士の発掘は飛躍的な進歩をもたらした一方で、容赦のない破壊行為の数々を引き起こすこととなった。

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オスニエル・マーシュとエドワード・コープは正反対の人物だった。マーシュは庶民階級の出身ながら、資産家の叔父の支援を受けて学業を極め、イェール大学で初代の古生物学教授となった。一方、コープは裕福な家庭の出身で、自然科学アカデミーで独学を重ねたアマチュア博物学者だ。魅力的な人柄だったが、短気な面もあった。さらに、マーシュはダーウィン主義者だったがコープはそうではなかった。

もともと二人は気の合う研究仲間で、1860年代には米国の大平原地帯で、発掘を一緒に行っていた。ところが彼らの友情は突如として終わりを迎える。1869年のこと、コープは化石の骨格を復元する際に、恐竜の頭蓋骨を間違えて首ではなく尻尾側に置いてしまった。それをマーシュが指摘したことで2人の関係は悪化。面目を失ったコープ は、間違いを記した屈辱的な論文のコピーを全部買い取ろうと躍起になったが、マーシュはあらゆる手を使ってそれを妨害した。

2人の争いはますます熾烈になり、卑劣さを極めていった。互いの研究を紙上で罵倒し合い、相 手の仕事を妨害するためには贈賄も厭わない。化石ハンターを雇ってスパイさせ、暴力的な手段に 及ぶこともしばしばだった。さらに由々しきことには、骨を盗むことなど朝飯前、ダイナマイトを 仕掛けるのもお手の物だった。相手の手に渡さないとか痕跡を消し去るという目的のためだけに、 古生物学上の貴重な標本を破壊してしまったのだ。利己的な欲得のために行われたこのような蛮行は学問に対する恐るべき冒とくだった。

コープは1897年に、マーシュはその2年後に他界した。その生涯に発見し命名した新種の恐竜 は、コープが56種類、マーシュは80種類に上った。一方で、世間を騒がせた彼らの確執は、その財産を失わせ、名声を失墜させる結果にもなった。しかし、もっとも許しがたいのは先史時代の遺物を故意に破壊したことだ。彼らによって発見された物は数多いが、失われてしまった物のほうがずっと多いかもしれない。

 

絶対に見られない世界の秘宝99 (NATIONAL GEOGRAPHIC)

作者:ダニエル・スミス 翻訳:小野 智子
出版社:日経ナショナルジオグラフィック社
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日経ナショナル・ジオグラフィック社 
雑誌「ナショナル ジオグラフィック」のほか、書籍、DVD、ウェブニュースを扱っています。1888年に設立されたナショナル ジオグラフィック協会において、初の海外版として創刊。写真のもつ力を駆使して世界のさまざな事象を伝えています。ウェブサイトTwitterfacebookで毎日情報を発信中。

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出版社:中央公論新社
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